自民党の裏金問題を巡る関係議員の処分でますます党内が混乱する。原理原則がないままの「場当たり処分」(自民党長老)は党内に反発、不満を生んだからだ。決定の過程では党幹部同士の私憤も表面化した。背景にあったのは司令塔の不在だろう。時系列で見ると、最初に処分問題で中心的な役割を担ったのは総務会長の森山裕。政治資金収支報告書への不記載が明らかになった82人の衆参議員からの聞き取り調査を主導した。
一方、幹事長の茂木敏充は「われ関せず」。党が危機に直面したときこそが出番の副総裁の麻生太郎も全く動かず。職場放棄状態だった。その流れを一変させたのが自民党大会(3月17日)での首相、岸田文雄のあいさつだった。
「茂木幹事長に党処分について結論を得るように指示した」
司令塔を森山から茂木にチェンジさせたのだ。自民党の党則上、党紀委員会は幹事長が招集を要請することになっており、処分に関して全く動こうとしなかった茂木に対する岸田の怒りの表れに聞こえた。それでもなお茂木は沈黙した。党内最長老で元幹事長の二階派会長だった二階俊博の処分問題が重荷だったからだろう。
二階派は会計責任者が政治資金規正法違反の罪で立件されており、その点では岸田も同じ。二階が処分対象となれば、岸田の処分も免れない。そこでも調整に動いたのが森山だった。二階の幹事長時代に長く国対委員長を務め、二階が厚い信頼を寄せている党幹部だ。