小池首相ストーリーがしぼみ、「総選挙なき総裁選」の公算衆議院東京15区補欠選挙の告示を控え、街頭演説会の応援に訪れた東京都知事の小池百合子(地域政党「都民ファーストの会」の特別顧問)。小池の「首相ストーリー」は急速にしぼみつつあるという Photo:JIJI

 国賓待遇の訪米を終えて意気揚々と帰国した首相の岸田文雄を待ち受けたのは、“試練の山”。帰国に合わせて実施された共同通信の世論調査では、支持率が3.7ポイント上昇したが、依然として23.8%の超低空飛行。訪米効果は限定的で、むしろ訪米前に駆け込みで決めた裏金議員への処分を巡り、岸田に対する「処分なし」について78%が「納得せず」と回答した。

 イランのイスラエルへの空爆による中東情勢の緊迫化がもたらした急速な円安も深刻だ。まさしく岸田は「行きは良い良い帰りは怖い」(自民党幹部)の状況にある。

 最大の試練は4月16日に告示された衆議院のトリプル補欠選挙だろう。東京15区と長崎3区は不戦敗。頼みの島根1区も苦戦が伝えられる。個別の事情があるとはいえ無為無策ぶりは自民党全体の“経年劣化”を浮き彫りにする。

 中でも東京15区補選は政権与党のプライドのかけらもなく不戦敗に追い込まれた。その混迷の要因に東京都知事の小池百合子が深く絡んでいる。元をたどれば昨年4月の江東区長選に起因する。保守同士の激戦の末に当選した元自民党衆院議員の木村弥生が、区長選期間中にユーチューブに自身への投票を呼び掛ける有料広告を出していたことが判明。これが選挙運動で候補者名を挙げて有料のインターネット広告を出すことを禁じた公職選挙法違反に問われた。

 この違法な選挙運動の指南役が自民党の前法務副大臣、柿沢未途だった。柿沢は区議らへの現金配布も発覚し、2人とも東京地検特捜部によって立件された。木村は区長辞任、柿沢も議員辞職に追い込まれた。木村辞任に伴い実施された江東区長選で当選したのが、元都職員の大久保朋果だ。

 この大久保の擁立に積極的に関与したのが小池だった。自民党都連会長の萩生田光一や公明党都本部幹部らと接触、自公プラス「小池党」ともいえる地域政党の「都民ファーストの会」との共闘が成立した。つまり自民の混乱に乗じて小池直系が江東区長に送り込まれたわけだ。