神戸空港は2025年に国際化スタート

 関西の空港事情の目玉トピックとして、25年春からは神戸空港で国際線がいよいよ就航する。その道のりには紆余曲折(うよきょくせつ)があった。もともと伊丹空港は米軍伊丹基地として接収された阪神国際飛行場が嚆矢(こうし)である。1964年にジェット機乗り入れが始まると、騒音問題が訴訟にまで発展する。そこで、「関西に新たな国際空港を造ろう」という動きが活発化し、神戸サイドが「関西第二空港」構想として、淡路島北部または神戸沖に建設してはどうかと提案した。

 その後、「関西第二空港」は国の調査の結果、最終候補地として泉州沖、神戸沖、播磨灘(高砂沖)、淡路島の4カ所に絞られる。その時点で交通アクセスの良い神戸沖が有力という見方さえあった。ところが最後の最後で神戸市議会が空港建設に反対し、神戸側が国際空港建設案を蹴ったこともあり、航空審議会によって現在の泉州沖に関西空港が建設されることが結論づけられたのだ。当時、自分から手を挙げておいて空港建設案を蹴った神戸市に怒った運輸省は、神戸市の役人を出入り禁止にしたといわれている。

 しかし、このすったもんだから20年もたたない1994年、神戸市は「やっぱり空港を建設してほしい」と陳情を再開する。阪神・淡路大震災を経て結局、神戸空港は建設されることになったが、「関西空港を邪魔してはならない」とくぎを刺される格好で国内線だけの空港に制限された。

 一方で、関西空港完成後は廃止が前提だった伊丹も、騒音訴訟の和解後は空港利便性を重視する住民も増えたことから、地元が存続を申し入れた。そうして現在の関西、伊丹、神戸の3空港が並立することになったのだが、昨今の混雑っぷりからすると、結果としてはこれで良かったのだろう。

 現在は空港民営化により、関西、伊丹、神戸はオリックスが母体の関西エアポートがまとめて経営している。一体経営であれば関空の邪魔にならないというロジックの基、神戸空港も25年春からようやく国際線チャーター便が就航する予定だ。

 気になるのは、どの都市に就航するかである。神戸市は韓国、台湾、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシアの7地域にポートセールスを行っているという。神戸には中華街があり、福建省出身者が多い(神戸市華僑歴史博物館より)。また、製鉄や重工、医療機械、アパレルなどの企業が多いことから中国事業所への出張需要が見込める。とはいえ、まずは他空港と競合しない地域の観光客をターゲットにセールスを進めているだろう。

 ここでカギとなるのが、神戸空港に就航しているスカイマークとフジドリームエアラインズ(FDA)である。23年11月、航空業界になかなか面白いニュースが飛び込んできた。FDAの親会社である静岡の名門企業、鈴与ホールディングスがスカイマークの株式を一部取得し筆頭株主となった。

 鈴木与平会長は、「国際線は魅力的」とインタビューに答えているし、スカイマークもサイパンに国際線を定期就航させた実績がある。スカイマークは22年12月に株式を再上場した以上、国際線を展開しなければ成長性に限界があり株価は伸び悩むだろうし、そもそも国際線志向が強いパイロットやキャビンアテンダントが他社へ流出しかねない。スカイマークとFDAが協力して神戸空港から国際線を飛ばす可能性は大いにあるに違いない。

 いずれにせよ神戸空港が国際化を果たした暁には、利用者にとって選択肢が増え利便性も上がる。また、飛行機に乗らない人にとっても空港の楽しみ方の幅が広がるはずだ。

神戸空港国際線はスカイマーク&FDAがカギになる!関西空港は大規模改装で「充実度」トップへ手狭な現在の神戸空港ターミナル。国際化に向け拡張工事中だ Photo by N.S.