米欧の経済界トップや政治家が懸念する最近の中国による輸出急増は、中国の製造業向け補助金の大盤振る舞いや膨張する工業生産能力が原因だと説明されることが多い。しかし、別の要因もある。中国の通貨・人民元の相場と、インフレ(の不在)だ。中国の実質実効為替レート(他国との貿易関係およびインフレ率の差で調整したレート)は、2014年の水準に戻っており、ここ10年間の上昇を打ち消している。人民元のこうした実質ベースの弱さが、他の輸出国を犠牲にする形で中国の輸出を加速させている。中国通貨安は、とりわけ米ドル高の影響を同時に受けているアジア諸国の経済や通貨を一段と圧迫している。米国は過去に人民元を巡って中国と対立してきた。米国にとって、インフレ調整後の元安は中国で製造される製品がこれまでよりさらに割安になるということであり、この傾向は輸入物価の低さに反映されている。米国民にとって中国製品が魅力的になるため、中国への依存度を低下させるという米当局の目標達成は遠のく。