とはいえ、働きながら産み育てることは、そう簡単ではない。今年、株価は最高値を更新したが、足元の経済は厳しいまま。非正規雇用で収入が少なく、育休などの両立支援制度を使えない女性は数多くいるのだ。企業による格差も依然として大きい。

「低所得層の賃金が上がってこないと、少子化は改善しないと思います」(藤波さん)

理想と現実に大差

 国立社会保障・人口問題研究所の21年の「出生動向基本調査」によると、独身女性が実際になりそうだと考えるライフコースは、「結婚せず仕事を続ける」が33.3%となり、前回から10ポイント以上も急増してトップになった。一方、理想のライフコースのトップは「結婚し、子どもを持つが、仕事も続ける両立コース」で34%。「結婚せず仕事を続ける」は12.2%で、理想と現実に大きく差が開いている。

「結婚相手の女性に経済力を要望する男性が増えている。女性の賃金が安いと、結婚のハードルが高くなると考えられる。日本では、既婚女性が出産するケースが大半。つまり出産のハードルも高くなる」(藤波さん)

 晩産化傾向に歯止めをかけた社会の良い変化。一方で、働きながら産み、育てることが難しい現実もある。仕事と出産のどちらも望む女性たちの葛藤はまだまだ続きそうだ。(編集部・井上有紀子)

AERA 2024年4月29日-5月6日合併号

AERA dot.より転載