しかし、取り組みによっても生産性の向上や離職率改善などの数値的な成果を得られている企業はまだ少ないはずです。

 日本企業のエンゲージメントについて、衝撃的な報告があります。

 米国の調査会社・ギャラップ社が、世界各国の企業に対してエンゲージメントの調査を実施したところ、日本企業の「熱意ある社員(エンゲージメントが強い社員)」の割合は世界平均23%に対して、5%にとどまりました。

 主要国の同割合は上から米国34%、インド33%、フィリピン31%、ブラジル28%、南アフリカ26%、タイ25%、インドネシア24%、中国18%、ドイツ16%、韓国12%、英国10%、フランス7%などとなっており、日本とイタリアが5%という数値は調査対象125カ国中124位の結果でした。これは2023年版の報告です。

図表:世界各国の「熱意ある社員」の割合同書より転載 拡大画像表示

問題点は社員の貢献意欲への対応不備
エンゲージメント向上のヒントとは?

 米ギャラップ社では例年同調査を実施しています。日本企業のエンゲージメントの低さは恒例のことで、世界最低ランクが何年も続いています。

 世界最低ランクのエンゲージメントは何を意味するのでしょうか。

「日本の場合、会社の役に立ちたくない人が多いのか……」

 などと捉えるのは間違いです。

 会社や組織のために貢献したい思いは潜在的に誰もが持っています。そういった社員の貢献意欲を満たしてあげられていないのが問題なのです。

 社員の貢献意欲を満たすには、やりがいや働きがいを育むさまざまな取り組みを必要とします。企業はそこに注力し、リーダーは最前線で任務にあたらなければなりません。

 チームの中にやる気のないメンバーが一人でもいたら、その思いはほかのメンバーに伝播すると前に述べました。逆もしかりです。

 リーダーの働きかけによってチームの中に貢献意欲の高いメンバーが一人でも現れたら、その思いはほかのメンバーに伝播します。

 チームの雰囲気を明るくし、みんなの頑張りを後押しする存在にもなり得ます。そういうメンバーが一人二人と増えていくことでチームや組織のエンゲージメント向上をもたらすのです。