「岸田降ろし」はなぜ起きない?選挙恐怖症に罹患した自民の病巣6月6日、衆院本会議で政治資金規正法改正案が賛成多数で可決され、自民党総務会長の森山裕(左)と握手する首相の岸田文雄(中央)。採決で造反者は出なかった Photo:JIJI

 政権与党第1党の自民党は“流行病(はやりやまい)”に罹患している。「選挙恐怖症」だ。4月の衆議院3補選惨敗に始まり、静岡県知事選挙など連戦連敗の“敗戦ドミノ”が止まらない。6月9日投開票の栃木県鹿沼市長選でさらに大きなショックが党内に広がった。立憲民主党県連幹事長を務めた元県議の松井正一(58)と自公推薦の元県議会議長の小林幹夫(70)との一騎打ちで小林が大敗したからだ。

 栃木県は自民党幹事長の茂木敏充(68)の地元。にもかかわらず得票は、松井の2万4600票に対して、小林は1万6410票にすぎなかった。自民党選対関係者は小林の敗因について政治資金パーティーを巡る裏金問題に加え、党内の危機感の欠如を指摘する。

「昨年の県議選でトップ当選をした58歳の松井に対して、4位当選だった70歳の小林を擁立した段階で負けが決まったと言っていい。本当に勝つ気があったのか。選挙対策そのものに緩みがあった」

 自民党の戦略のなさは東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)の対応が象徴する。前回の都知事選に続き候補者擁立を見送り、現職知事の小池百合子(71)の支援に回るしか選択の余地はなかった。それも「推薦」ではなく、選挙期間中に政治活動をするための「確認団体」に参加する方式を取った。応援団の一員として場所を確保するわけだ。狙いはただ一つ。「不戦敗回避」だ。東京都の衆院小選挙区は全国最多の30。次期衆院選が視野に入る中で勝ち組に入る必要があった。小池が2017年の衆院選直前に「希望の党」を結成して当時の首相、安倍晋三を脅かしたことがあり、小池との関係修復は必須だった。