政治資金規正法改正の大問題、連座制は権力の乱用につながる【佐藤優】5月20日の衆議院予算委員会の集中審議で、自民党の政治資金規正法改正案について答弁する岸田文雄首相 Photo:JIJI

政治資金規正法の連座制導入は権力の乱用につながる?自民党が理解していない公明党の本質とは?作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が読み解く。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)

政治資金規正法の改正を巡って、自民党が孤立

 派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題を受けて、自民党は5月17日、政治資金規正法の改正案を国会に提出しました。同日の「朝日新聞デジタル」は、こう報じています。

〈共同提出に向けた公明党との調整は決裂し、重要法案をめぐる与党間の合意がないまま野党を交えた審議に入るのは極めて異例だ。自民案に対し、政治資金の透明化に後ろ向きとの野党の批判は強く、来週からの国会審議を前に自民の孤立が鮮明になっている〉

 政治資金が政府の予算から出る金であれば、連立与党で政府案として提出するのが普通です。しかし政党交付金は違います。また、改正法案も閣法(政府提出法案)ではありません。公明党の山口那津男代表が言うように「野党の考え方も伺って幅広い合意形成を目指す努力」が求められるのは当然です。

 自民党の議員たちは、「公明党って、こんなに怖い政党だったのか」と驚いたはずです。改正案を単独提出するに至る経緯では、次のような報道もありました。

〈(5月)13日に官邸で開いた政府与党連絡会議でも首相と山口氏の認識の差は明確だった。首相が「引き続き与党間でしっかり協力」と呼びかけたのに対し、対面に座っていた山口氏は「野党も含めた協議を急がねばならない」と強調。居合わせた官邸幹部は、首相の面前で、その発言を否定する連立パートナーの姿に戸惑いを隠せなかった。「『山口さん、何を言うんだ?』と我が耳を疑った」〉(5月14日「朝日新聞デジタル」)

 官邸幹部が「我が耳を疑った」のは、公明党の本質を理解していないからです。公明党は、池田大作・創価学会第3代会長によって創立された価値観政党です。公明党の前身である公明政治連盟の主要な政治課題が「宴会政治の打破」だったことは、この党の本質を知るために重要です。以下は、公明党のHPです。

〈公明政治連盟が出発した頃、全国の地方議会では「宴会政治」が横行していた。議会の委員会終了後や管外視察後などに、議員たちによる宴会が開かれることが慣例となっていた。

 血税を無用の宴会で乱費することを、誰も疑問に思わない。倫理感覚の恐るべきまひであった。公明は、この宴会政治の追放に全国で取り組んだ。口火を切ったのは都議会公明。議会で取り上げた当初は、誰も耳を貸さなかった〉

 この記載にある1950年代後半の政治家や新聞記者は、宴会政治は当たり前と思っていた。しかし国民の感覚は違ったので、公明党は支持されました。政治腐敗の除去が立党の根本である以上、決して譲れないということが、自民党の議員には分かっていません。