支持率低迷にあえぐ岸田政権だが、関係者への取材で岸田首相が自民党総裁選、再出馬への意欲を失っていないことがわかった。取材から見えてきた「岸田首相を倒せる唯一の人物」とは――。(イトモス研究所所長 小倉健一)
内閣支持率は2割台で
「最悪の事態」に陥っている
内閣支持率の低迷が続いている。岸田文雄首相は、6月23日に会期末を迎える国会において、衆議院を解散し、自公で過半数を獲得、9月の自民党総裁選で再選を果たすというシナリオを描いていたが、この衆院解散を見送ることになった。しかし、引き続き秋に行われる自民党総裁選、再出馬への意欲を失っていないことが関係者への取材でわかった。
この「解散断念」の背景については、6月3日になって複数の自民党議員が明らかにしており、そのうちの一人が筆者にこう解説する。
「裏金問題に区切りをつけ、定額減税の開始をもって、国民に信を問うつもりだった。衆院を解散して、選挙区で負けるのは選挙に弱い無派閥議員や裏金問題で揺れる安倍派の議員が中心で、岸田首相を支える岸田派、麻生派、茂木派は盤石な地盤を抱えている議員が多い。多少議席数を減らしても、自公で過半数さえ握れれば、再選は確実なものになるはずだった」
内閣支持率は、どの調査でも軒並み2割台に落ち込んでおり、選挙区の情勢が「多少減らす」どころではない最悪の事態に陥っているのが見て取れる。
党内では「岸田首相では選挙を戦えない」という声が急速に高まっており、連立を組む公明党の山口那津男代表も「政治の信頼回復が当面の優先事項だ」「信頼回復のトレンドを確認できるまでは解散すべきではない」などと「信頼回復」をキーワードに岸田首相による解散・総選挙へのけん制を続けている。
人気の高い上川陽子外相は
禅譲をひたすら待つ姿勢
野党は「総裁選前の岸田首相の辞任」→「新総裁選出」→「内閣発足直後に衆院解散」がほぼ既定路線だと捉えている節があるが、実は岸田首相の再選出馬で勝利する可能性が低くないことを全国紙政治部記者が解説する。
「岸田首相が総裁選で再選される可能性は十分にある。少なくとも岸田首相が総裁選に出馬をすれば、自民党内からも人気の高い上川陽子外相は岸田派であり、出馬することはなくなる」
上川陽子外相は、野心をひた隠しにし禅譲をひたすら待つ姿勢のようだ。全国からポスト岸田として人気の高い上川外相に講演の依頼が殺到しているが、いずれも「公務多忙」などを理由に断りを入れているという。メディアへの個別取材も、積極的に応じていない。こうした「待ち」の姿勢に、自身も講演を断られたという自民党関係者はこう言う。
「このまま待ちの姿勢を続けて、もし岸田首相から首相の座を譲ってもらえれば、党内がまとまりやすいのは事実。静岡県知事選での上川氏自身の発言が失言として報じられたこともあって、前に出ていくことに対して消極的にさせてしまっている面もあると思います。
しかし、待ちの姿勢で、最高権力の座を射止めたとしても、短命政権で終わってしまうのは、日本だけでなく、多くの議院内閣制の国で起きていることです。波風を立てず、岸田首相から譲ってもらっているかのように見られてしまえば、岸田政権の存続と受け止める国民が許すとは思えません」