外部圧力への危機感と人手不足は
企業が変わるチャンス

 こうしたアクティビストの圧力に対する最善の防御策は優れた経営をすることだ。高収益かつ効率的な企業の株価は高くなるので、アクティビストにとってこのスキームは往々にして高くつきすぎてしまう。さらに、健全な戦略を持ち、経営がしっかりしている企業には、長期的で安定した投資家が集まってくる。このように、海外投資家や機関投資家の登場は、投資対象となる企業だけでなく、あらゆる企業にとって、収益性に対して市場の規律をもたらす。

 改革者にとって、こうした変化は企業の刷新と変革を進める絶好の機会となる。ハゲタカの脅威を藁人形論法的に現実の危機や認識される危険として利用して、必要な改革を押し通してしまえばよい。

 危機感をテコにすれば、全レベルの従業員に変化を受け入れるよう説得しやすくなる。これには、旧来の事業から撤退し、新技術に積極的に投資したり、社内の研究開発プロセスを再設計したりすることも含まれる。新しい株主からの圧力を受け入れ、こうした変化をすべてやり遂げた企業は、新しい投資家を引きつけ、株価が上昇する可能性が高い。そうすれば、ハイテクで高収益の市場にピボットするためのリソースが増えるだろう。

 高齢化と人口減による社会縮小など、日本では大きな構造変化が進行中だ。2050年に「生産年齢人口」(15~65歳)は現在の約7200万人から3割減少して5000万人を切ることが予測される。これは公共財政だけでなく労働力不足の観点でも大きな脅威とみなされる。実際に「人材争奪戦」はすでに始まっている。

 この大幅な人手不足により、労働者の交渉力が高まり、中途採用(転職)が急増しているのだ。従業員は給与や仕事内容についてより多く要求ができる。こうした権利拡大はすでに2019年の働き方改革に反映されている。昭和の伝統的企業(JTC)にとって、人材の確保や維持がままならなくなるので、これは大きな脅威だ。しかし、先頭ランナー企業と優秀な人材からすれば、大きなチャンスの到来といえる。