「無人コンビニが普及し、手ぶらで決済できる時代が来る」。そんな報道が盛り上がったのも今は昔。無人コンビニが日本国内を席巻する日は未だ到来せず、実証実験ばかりが繰り返されている。それどころか「セルフレジ」すら使われず、有人のレジに客が並んでいる様子を目にすることも多い。なぜ無人コンビニはいつまでたっても普及しないのか。その背景にある「二つの理由」を明らかにする。(流通ジャーナリスト 森山真二)
「無人コンビニ」が話題になってから
数年が経過したが…
なぜ、「無人コンビニ」の出店に弾みがつかないのか――。
日本では7~8年ほど前から、無人コンビニの「実証実験開始」といったニュースをチラホラ聞くようになった。細かな仕組みは企業ごとに異なるが、客がキャッシュレス決済のアカウント情報を事前に登録してから入店すると、人工知能(AI)・カメラ・センサーなどによって「いつ・誰が・どこから・どの商品を取ったか」を識別。自動で決済が完了するというのが大まかな流れだ。
客にとっては、店員と顔を合わせる必要がなく、「セルフレジ」のように自分で決済する手間も生じない。「レジ待ち」という概念もなくなる。店舗側にとっても、オペレーションの効率化につながる。実用化すれば、客と店の双方にとっていいことづくめだ。
そんな無人コンビニは当初「東京五輪までの実用化を目指す」といった発表や報道がなされ、しばらくすると「新型コロナウイルスの感染防止に役立つ」と期待を集めた。あるコンビニチェーンの担当者が、「レジ無し店舗の正確性は90%超で、(人物や商品を)ほぼ正しく認識できます」と自信たっぷりに胸を張っていたこともある。
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筆者も「関係者がそう言うなら、無人店舗は普及が進むだろう」と見ていた。だが、4年たっても5年たっても一向に進展しない。東京五輪は延期された末に開催され、新型コロナは「5類」に移行してしまった。今もコンビニ各社では実験が進んでいるものの、全国展開にはほど遠い現状だ。実用化されている店舗はごくわずかである。
それどころか、業界で最も先進的だとされてきた、米Amazonの無人店舗「Amazon Go」ですら閉店が相次いでいる。もともと2018年に米シアトルに1号店をオープンし、21年までに3000店舗を展開すると意気込んでいたが、現在は20数店舗にとどまっている。
なぜ無人コンビニは普及しないのか。国内のコンビニ関係者に取材したところ、二つの答えが見えてきた。