意識される政治リスク
メキシコで与党大勝が材料視
為替相場には数多くの変動要因が存在するが、ここにきて政治リスクが意識された動きが目立っている。フランスでは欧州議会選挙での極右台頭を受けて下院選挙の実施が決まったが、与党勢力が大敗するとの見込みからユーロ売りが強まった。南アフリカでは1994年の民主化選挙以来初めて与党アフリカ民族会議が単独過半数を割りこみ、南アフリカランドが売られた。
こうした中、フランスや南アフリカとは反対に、与党勢力が勝ちすぎて売りが出ている通貨がメキシコペソである。
メキシコでは6月2日に大統領選、上下両院選挙、首都メキシコ市(特別州)を含む9つの州知事選などが行われた。大統領選では国民人気の高い現職のロペス・オブラドール大統領の後継とされたシェインバウム前メキシコ市長が勝利した。ロペス・オブラドール現大統領の人気もあり、下院では憲法改正に必要な全議席の三分の二を超える365議席を獲得。上院でも三分の二に4議席と迫る82議席を獲得し、スーパーマジョリティ(圧倒的多数派)に近い状況となった。
投資資金は混乱や先行き不透明感を嫌う。このため一般的には政権交代や与党勢力が後退する際に通貨安になりやすい。しかし、メキシコにおいては与党の大勝を受けて、メキシコペソが急落した。
メキシコペソ円は選挙前の9円25銭前後から選挙後2日間で8円台半ば近辺まで急落。その後、市場からの信頼が厚いラミレス財務・公債相が留任する方針が示されたことで9円ちょうど近辺まで戻したが、6月12日には8円21銭と、選挙前から11%強の下落を一時記録した。