JR東日本、東海、西日本のJR3社の24年3月期決算は増収増益となり、コロナ前の水準に戻りつつある。しかし決算書をひもとくと、各社の収益構造には変化の兆しがある。コロナで鉄道事業の受けた衝撃、そして長期的な人口減少トレンド……JR各社は、不確実な時代に求められる「第三の柱」の創出に試行錯誤している。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)
特典で大盤振る舞いのJRE BANK
好調の裏にある鉄道業のリスク
「特典が太っ腹すぎる」
JR東日本が5月に開始したデジタル金融サービス「JRE BANK」について、ネット上でそんな声があふれた。実際、サービス開始早々に入会申し込みが殺到し、受付を一時中止したほどだ。
駅構内のATM「VIEW ALTTE」での引き出し手数料が無料になるだけでなく、利用状況に応じて4割引きの優待割引券や新幹線の旅行サービス「どこかにビューーン!」の割引クーポンがもらえるなど、まさに“大判振る舞い”だ。JR東が目標に掲げる100万口座の達成に向け、上々の好発進を切れたといっていいだろう。JR東の伊藤敦子常務は「手応えはある」と自信を示す。
一方、このタイミングでの銀行業参入を「遅きに失した」と冷ややかに見る向きもある。鉄道事業の経営を揺るがしかねないリスクは確実に進行しており、一見好調に見える24年3月期決算にも、それは透けて見えるからだ。
リスクとは一体何か。そして鉄道業界は、そのリスクとどのように対峙しようとしているのか。次ページで明らかにする。