円安だけが理由じゃない
安全・安心・清潔な日本は“特殊な国”
もう1カ所、私が大好きな場所は、能登半島だ。1月1日の地震によって大きな被害を受けてしまったことは本当に心が痛む。少しでも役に立ちたいと思い、すぐにペイパル社内で復興支援活動を行うNGO団体などへの寄付をグローバルに集める仕組みを作った。私が米国の本社に出張に行った際にはリーダーたちに直接寄付を呼び掛けたほか、世界中の社員に協力を仰ぎ、多くの支援を得ることができた。能登の復興にはまだ多くの苦難を伴うだろうが、一日も早く、平穏な日々が戻ってくることを祈っている。
能登の魅力は、やはり大自然だ。昨夏も息子と2人でレンタカーを借りて、あちこち走り回った。砂浜の海岸線や、一歩踏み外したら崖下の海に転落するような細い山道など、変化に富んだドライブが楽しめる。
道中には小さな漁師町もあって海の幸も楽しめるし、温泉につかることもできる。輪島市街に行けば、輪島塗や和紙などの伝統工芸品に触れることもできる。金沢まで足を伸ばせば、兼六園などの著名な観光スポットを見ることも可能だ。
最初に紹介した岩手県北上市も、私の大好きな松本も能登も、自然と文化の両方の魅力を備えていて、一回の旅行で同時に楽しむことができる。しかし、考えてみれば、このような場所は日本の至るところに存在する。つまり、日本の地方が持つインバウンド産業のポテンシャルは、とてつもなく大きいのだ。
欧州の観光地にも、文化と自然を同時に楽しめる場所はあるが、特にアジアでは、西洋人から見ると日本がこうした条件を最も満たした国に思える。それに加えて日本は安全、安心、清潔だ。それら全てを持ち合わせている日本は、かなり“特殊な国”だといえる。だから、私の周りの外国人は皆、日本に来たがる。もちろん、円安の影響もあるが、決してそれだけではない。