化粧品“真の勝者”は?コーセーとポーラが世界最大手のロレアルに決して負けない強み【楽ちん理解決算書】Photo:JIJI, SANKEI

会計知識ゼロの人でも「豚の貯金箱」と「風船」のイラスト図解でよく分かる!難しい財務も5分で理解できるメソッドで、決算書のポイントをつかみ、各業界の特徴や動向を探って行こう。第1回は、化粧品業界。国内外の化粧品会社4社を比較してみよう。【前後編の前編】(Star Compass代表取締役/松本興産取締役 松本めぐみ)

化粧品業界はグローバルな成長に期待大!
海外大手と国内老舗を比べてみると…?

 世界の化粧品市場は2021年の420.3億ドルから30年には1075.3億ドルへと、年平均11%の伸び率で成長すると予測されています(ファイナンス2023年2月号「日本の化粧品産業の展望」)。一方、国内市場は、24年2月の化粧品出荷額が1141億4700万円(19.3%増)と2桁増で伸びています(経済産業省・生産動態統計)。

 コロナ禍が明けて人々が外出するようになり、マスクを取って顔を出す日常が戻りました。グローバルに見れば、経済的に豊かになった国の人々が質の高い化粧品を求めて、マーケットは拡大の一途をたどるでしょう。

 そこで、国内外の有名な化粧品会社4社、仏ロレアル、米エスティ ローダー、コーセー、ポーラ・オルビスホールディングスの決算書のポイントをつかんで、各社の様子を探ってみましょう。決算書というと難しい印象があるかもしれませんが、「豚の貯金箱」と「風船」のイラスト図解に置き換えれば、企業の“性格”が楽しく分かるようになります。

 最初に、4社の概要をかいつまんで把握しましょう。

ロレアル(L'Oréal)
世界最大の化粧品メーカーで売上高は約6.5兆円。ヘアカラーが祖業で、化粧品やスキンケアなど50以上のブランドを持つ。百貨店で販売される高級ブランドから、ドラッグストア向けのコンシューマー商品まで幅広い。主要子会社にランコムやメイベリンニューヨークなど。

エスティ ローダー(Estee Lauder)
1946年にニューヨークで創業。ブランドはEstee Lauder、クリニーク、M・A・C、BOBBI BROWN、LA MER、JO MALONE、アヴェダなど。日本でいうところの人気「デパコス」が中心。

コーセー(KOSÉ)
1948年創業の化粧品大手。60年代後半からアジアへも進出。主なブランドにエスプリーク、ファシオなど。雪肌精は特にインバウンド旅行者に人気。また、高級ブランド・コスメデコルテの美容液の広告にメジャーリーグ・大谷翔平選手を起用したことでも話題に。肌乾燥の原因となる「悪玉セラミド」を発見したりなど、研究力でも評価される。

ポーラ・オルビスホールディングス(POLA)
1929年にポーラが静岡で創業。60年にポーラ銀座ビル建設。84年に通信販売を主とするオルビス創業。2010年に東証一部上場。その他、THREEなどブランド多数。

どのようにおカネを集め、使ったか
「豚の貯金箱」に置き換えてみよう

 まず、貸借対照表(バランスシート、BS)を「豚の貯金箱」に置き換えてみましょう。BSとは、企業がどのようにおカネを集め、どのように使っているかを表わすもの。だから、私は貯金箱に例えてみました。BSは左右に分けると理解しやすく、主に4つの項目に注目します。

(左側)
・流動資産:1年以内に現金化する資産
・固定資産:1年以内に現金化しない資産

(右側)
・負債:借金などのマイナスの要素
・純資産:資産から負債を引いた残りの部分

※負債は流動負債(1年以内に返済・支払期限が来る)と固定負債(1年以上)に分かれるが本稿ではまとめて負債とする

 BSの左側は、「会社がその時点で持っている資産の残高」が記されています。なので、豚の貯金箱の中にどんな資産がいくら残っているのか、残高を記しているイメージです。一方、右側には、貯金箱の中身である資産を得るための、「資金」を「どのように調達したか」の手段が書かれています。

図2 自己資本比率は豚の貯金箱の右側の赤枠の下部分の割合図 自己資本比率
※1ユーロ157.12円、1ドル144.94円で換算
L'Oreal 23年12月期 BSを豚の貯金箱のイメージで記載 拡大画像表示

 まず、貯金箱の右側のうち純資産の割合がどれだけ高いかを見てみましょう。純資産とは、株主からの出資や、これまでの利益(税引き後)の蓄積が記されています。つまり、純資産が大きければ大きいほど「過去にしっかり利益を残してきた」といえます。

 この割合を示した数値が「自己資本比率」で、日本企業の平均は約40%。50%を超えると世界標準で優良企業と評価されることが多いです。

 自己資本比率(%)=純資産÷総資本×100

 ロレアルは自己資本比率が56%あり、世界標準の優良企業であることが分かります。