その奥大山の天然水で酒造りをするのが、江府町の宿場町江尾で1877年に創業した大岩酒造本店だ。35年ほど前、町から大山の標高800mで湧く天然水を商品化したいと協力要請があった。水の販売は好評で、その後、事業は第3セクターが引き継いだが、水の良さに引かれ、仕込み水を天然水に変更。「硬度は約20の軟水で、酒からも天然水の良さが味わえます」と、5代目で杜氏を務める大岩一彦さん。自然に滴る酒を詰めた大吟醸「奥大山の雫」など、奥大山を酒で表現する。そして、5年前から挑戦しているのが生酛造りだ。硬い蒸し米を人力ですりつぶす必要があり「天然水で行う天然の造りに憧れて始めたものの、正直、大変なものに手を出したと後悔しています」と苦笑いする。「毎年が1年生」で取り組んだ生酛の酒は、深く染み入る味だ。江府町は水の良さに加え、寒暖差のある気候環境が良質な米を育む。大岩さんが使う酒米は、全て町内産の山田錦と五百万石で「奥大山の恵みをこの一本に」がうたい文句だ。
●大岩酒造本店・鳥取県日野郡江府町江尾1872●代表銘柄:秀峰岩泉 大吟醸奥大山の雫、大吟醸 天の蛍、秀峰岩泉 純米吟醸、秀峰岩泉 純米酒●杜氏:大岩一彦●主要な米の品種:山田錦、五百万石