回答のポイント:中長期的な目線で思い切った戦略を描く
文房具店の強みや課題、顧客や競合の動向などの経営環境を踏まえ、中長期的な企業変革に向けた戦略を提案しましょう。
以下が解答例です。
※ケ―ス面接の答えは1つに定まるものではありません。提案内容が皆さんの考えと大きく異なる場合もあると思いますが、その際は思考の深さや提案内容の具体性を見比べて自己評価してみてください。
問題の解像度を上げる
今回のクライアントである「ある個人経営の文房具店」について、地方の商店街などに立地しており、地域の住民や学校などにノートやペンといった事務用品や絵の具などの画材を販売している店を想定しました。
事務用品は近年のペーパーレス化の流れを受けて需要が減少していると考えられ、業界にとっては厳しい状況です。文房具の多くは既製品であり、商品での差別化も簡単ではありません。
また、想定される競合としては、他の文房具店に加え、コンビニやスーパー、ショッピングモールの文房具売り場、ECサイトなどがあります。
他の文房具店に関しては、近隣に複数店舗がひしめくことは想像しにくい一方、取扱量の多いショッピングモールや利便性の高いコンビニは強力な競合といえるでしょう。
さらに、実店舗を持たないAmazonや楽天市場などのECサイトは、利便性を重視して文房具の質やデザインに特にこだわりがない層や、既に決められた商品を安く購入したい層から強く支持されていると考えられます。
クライアントの強みと課題を整理する
ここまでのクライアントに関する前提や経営環境に関する検討を踏まえ、クライアントの強みや課題を分析します。
まず、クライアントのような個人経営の文房具店は、地域の住民や学校との距離感が近く、顧客の要望に合わせて商品を仕入れるなどのきめ細かな対応ができる点が強みと言えるでしょう。
ただし、文房具は複雑な商品ではなく、詳細な説明を求められることは少ないと考えられ、店員によるきめ細かな対応がどの程度の他社との差別化につながるかは検討の余地があります。
一方、課題としては、近隣の住民や既存の取引先などに顧客が限られている点があります。
また、文房具にこだわりのないターゲット層に対してクライアントの店で文房具を買う理由を生み出せておらず、ショッピングセンターやECサイトに顧客を奪われている状況だと考えられます。

中長期の戦略を定め、打ち手を具体化する
ここまでで整理したクライアントの強みや課題、経営環境などを踏まえ、戦略として(1)強みのさらなる強化と、(2)抜本的改革を立案します。
まず1つ目の「強みのさらなるの強化」の打ち手として、地域内のネットワークを活かした営業強化による新規顧客の開拓を行うことを提案します。
具体的には、学校やオフィスなどの既存の大口顧客に近隣施設や取引先を紹介してもらい、紹介された有望な潜在顧客に対して集中的に営業を行います。
こうしたクライアントの強みを活かして新規顧客を開拓することで、事業基盤を強化します。
一方、中長期的にクライアントが成長し続けるために、2つ目の「抜本的改革」として次の2つの打ち手を提案します。
【①商品構成や空間デザインの見直し】
文房具にこだわりのある人をターゲットとして店内に並ぶ商品や売り場を見直し、「店舗に足を運ぶ意味」の創出や競合との差別化を図ります。
まず商品構成に関しては、既存の汎用文房具以外に、最新の文房具やデザイン用品など、競合であるショッピングモールやコンビニの棚にはない便利でユニークな商品を並べることを提案します。
この際、商品を手に取って体験できるようなスペースを同時に作ることで、ECサイトとの差別化を図ることができます。
商品選びに際しては、クライアントの顧客との距離の近さという強みを活かし、ヒアリングを行うことも有効でしょう。
また、近隣でなくとも文房具にこだわりのあるターゲット層に足を運んでもらうため、他の文房具店とは一線を画すような店内の空間デザインを工夫することが有効だと考えます。
【②販売チャネルの多様化】
文房具業界の厳しい経営環境やクライアントの事業規模を考えると、既存の店舗単体で今後中長期的に成長していくことは容易ではありません。
そこで、顧客や収益源の多様化を狙いとした新たな販売チャネルの確立を提案します。
まずは既存事業の強みを活かし、近隣の小売店と連携して、棚に商品を陳列してもらうことが一案です。
また、ECサイトの台頭は脅威である一方、新しい事業機会とも捉えることができ、ECサイトを活用して販売チャネルを拡大することも一案です。
具体的には、Amazonや楽天市場のようなECサイトに自分たちで仕入れたユニークな商品を出品し、文房具にこだわりのある層に訴求します。
他にもInstagramやShopifyを活用し、自社ECを構えることを検討してもよいでしょう。遠方に住んでいる人など、既存の実店舗ではリーチできない客層にも訴求することが可能になります。
さらには、思い切って近隣の小売店やその他規模の小さい文房具店を買収することも選択肢として挙げられます。こうした買収によって店舗の規模を拡大しながら、仕入れなどでスケールメリットを活かすことは十分考えられるでしょう。
以上となります。ありがとうございました。
面接官からの質問
――提案いただいた戦略で、この文房具店には具体的にどのような効果がもたらされるでしょうか?
クライアントの客数と客単価の双方にプラスの効果があり、結果として売上高の向上がもたらされると考えます。たとえば、ネットワークを活かした営業強化や販売チャネルの拡大は「客数の増加」につながります。
また、商品構成の見直しで平均的な商品単価は上昇しますし、空間デザインの工夫などで今まで来店しなかったような文房具にこだわりのある顧客を呼び込めれば、客数だけでなく、客単価の向上につながります。
――戦略の実行において、どのようなハードルが存在しますか?
まず、商品構成や空間デザインの見直しについては、従来にない発想やノウハウが求められます。したがって、適宜外部の事業者に委託しハードルを下げることが有効だと考えます。
また、ECサイトやSNSの活用に関しては、デジタルマーケティングの知見が必要になります。専門人材獲得の難易度は高いですが、副業を想定した求人募集を行うとよいかもしれません。
さらに、買収は相手のある話であるため、実効性や実現可能性についての検討を行う必要があります。
――これまで売っていた汎用文房具の販売からは、撤退するということでしょうか?
いいえ、汎用文房具は引き続き販売します。新たに入荷するユニークな商品がフックとなるように売り場を工夫し、現状の売れ筋商品は引き続き店頭に並べ、既存顧客の流出を防ぎます。
(本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)