【村山富市とシャケ定食】庶民的食堂を愛し、カネを嫌った元首相に自民党議員もビックリPhoto by Wataru Mukai

私が推薦人を集めて出馬すれば変わります――。自民党総裁選へ、事実上の出馬宣言をしたのは青山繁晴氏。「派閥とカネ」問題の淵源は総裁選にあると喝破する。「野党とカネ」にも言及。官房機密費や政策活動費の不適切な使われ方を明かす。一方で、国会議事堂の庶民的な食堂でシャケ定食を食べる村山元首相の言葉には心を打たれたと言います。(構成/石井謙一郎)

この連載は、派閥論の名著と名高い渡辺恒雄氏の『派閥と多党化時代』(雪華社)を復刊した『自民党と派閥』(実業之日本社)を事前にお読みいただいたうえで取材をしています(一部を除く)。

私が総裁選に出馬すれば変わる

――渡辺恒雄さんの著書『自民党と派閥 政治の密室』には、大事な部分がふたつあるというご指摘でした。1つは、「派閥とカネの問題の淵源が総裁選びにある」と喝破していること。2つ目は何でしょうか。

 総裁選すなわち日本の首相選びが、どれほどカネと野心に塗れた派閥抗争で、際限なく繰り返されてきたか。渡辺さんの本は、その実態を徹底的に描写しています。

 その上で「いつかは独自の理念や哲学を持っている総裁が選ばれる時が来るかも知れない」と予言している点が、重要な点のふたつめです。

――その「時」とは、いつでしょうか。政治とカネの問題で有権者が深く失望し、岸田内閣の支持率が10%台に低迷する中、9月に自民党総裁選が行われます。青山さんは「総裁選は変わるべきだ」とおっしゃっていますが、どうすれば変わりますか。

【村山富市とシャケ定食】庶民的食堂を愛し、カネを嫌った元首相に自民党議員もビックリPhoto by Wataru Mukai

 私が推薦人を集めて出馬すれば変わります。派閥という私的な集団が政治を壟断(ろうだん)してきた淵源は、総裁選です。

 しかし私には派閥なく、抗争なく、親分もない。政治資金パーティーは個人でも一切、開かず、団体の支持も受けず、後援会も作らず、後援会長も置かずに、議員活動を続けてきました。したがってカネと利権のしがらみがなく、野心も野望もなく、ただ理念と哲学と政策と実践力だけがあるんです。

 まつりごと(政)の改革においては、やるべきことの第一歩が、政策活動費の廃止です。自由民主党が改正政治資金規正法に盛り込んだ10年後の公開では、改革になりません。

――政治とカネは、自民党だけの問題ですか。

 表に出せないカネというのは、基本的に野党対策にも使われてきました。その中には政策活動費も、官房機密費も含まれます。私は共同通信の政治記者だったときから、野党のモラルの低さと政策の貧しさに愕然としていました。

 社会党(当時)のベテラン幹部議員が国会対策委員長だったとき、背広の内ポケットが左右両側にいくつも作られているのを見ました。誰からいくら貰ったか後で混乱しないように、内ポケットで仕分けできるようになっていたんです。

【村山富市とシャケ定食】庶民的食堂を愛し、カネを嫌った元首相に自民党議員もビックリ村山富市元首相 Photo:JIJI

 そうかと思えば、同じ社会党でも村山富市さんは違っていた。国会議事堂の中には、議食(ぎしょく)こと議員食堂とは別に、かつては「人民食堂」と揶揄された庶民的な食堂があります。あるとき、国対委員長時代の村山さんが一人でシャケ定食を食べているのを偶然、見ました。のちに社会党委員長になり総理になる、その前の時代ですね。

 私もシャケ定食のお盆を持って近づき、村山さんに「お隣、いいですか」と聞いて、一緒に食べながら訊いてみました。

「議員専用の綺麗な食堂があるのに、なぜこの人民食堂なんですか」

「ワシはあんなところ、嫌いなんじゃ。赤絨毯なんか敷いてあっての」

 前任の国対委員長の一人が背広に多数の内ポケットをつくっていたことも聞いてみました。

「あれも嫌いじゃ」

 と仰った。「こんな人もいるんだな」と思ったのを覚えています。

 清潔な人だったから、本当は亡き梶山静六さんが最初に「あんた総理をやれ」と言ったわけです。村山さんの清潔さが目立って、自社連立政権という発想が出てきたわけです。

ノーカット完全版はこちら!「ワシはあんなところ、嫌いなんじゃ」村山富市とシャケ定食、自民党議員もビックリの思い出