図表:事業規模別業界の景況感に関する指標の推移事業規模別 業界の景況感に関する指標の推移(全ト協調査)
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 トラック事業者の業績回復は事業規模に比例する傾向が従来からみられる。全ト協が公表している最新の経営分析(22年度決算版)によると、貨物運送事業の営業損益率は全体で0.0%。これを車両規模別にみると、「101台以上」は2.2%、「51~100台」は1.2%と営業損益がプラスだが、「11~20台」はマイナス1.2%、「10台以下」はマイナス3.6%と赤字になっている。

 全ト協では、「燃料価格や車両価格、人件費など運送原価が上昇する中、真荷主による価格転嫁ができても、元請け事業者が実運送事業者に対する価格転嫁に十分に対応できていない」と分析した。構造的に小規模の下請け業者が多く、コストアップ分の価格転嫁が難しく、中小企業庁が実施した価格交渉促進月間(24年3月)フォローアップ調査でも、トラック運送の価格転嫁率は28.1%にとどまり、27業種中最下位となっている。

4月以降、倒産が前年比2倍で推移

 価格転嫁が進まないことに加え、コストの上昇、荷動きの低迷、「2024年問題」に伴う労働時間の減少が重なり、経営に打撃となっている。帝国データバンクによると、24年上半期(1~6月)の道路貨物運送業者の倒産件数は186件。前年同期比39.8%増となり、上半期として09年に次ぐ2番目の多さだった。倒産件数は負債総額1億円未満の小規模な業者が半数を占めている。

「2024年問題」が始まった4月以降、とくに倒産件数は増勢にある。東京商工リサーチによると、道路貨物運送業者の4月の倒産件数は前年同月比2.1倍の30件、5月は2.2倍の46件となり、2カ月連続2倍で推移。5月は08年(45件)を上回り、最多を更新した。倒産の要因である「求人難」、「後継者難」、「物価高」は早期解消がのぞめず、倒産件数は今後も増えると見込まれる。

 公正取引委員会は23年11月、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表。発注者に対する価格転嫁受け入れへの圧力を強めている。中企庁も下請事業者との価格交渉・転嫁に後ろ向きな大企業を実名で公表するなど、行政は適正な下請け取引への監視を強化している。大手事業者の値上げが浸透し、中小事業者への還元も一部で始まっているが、業界全体の底上げが急がれる。

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