時間を共有し、話を聞く

 あなたの大切な人、身近な人の死を意識しだしたとき、そのお別れまでの時間に余裕があるならまだしも、余命宣告などを受け、時間が迫っている場合には、逝く人の思いや希望をヒアリングすると同時に、最善の条件で可能なことから実行することが大事です。

 なかでも「時間を共有する」ことは最も大切です。
 逝く人と送る人、それぞれの胸中にはそれぞれの思いがあります。できる限り時間を共有することで、双方の愛情が深まる、または誤解が解けることもあります。
 逝く人と離れて住んでいるのなら、その安否確認がてら定期的に電話することも大切です。毎日何時に電話する、毎週何曜日に電話するといったように習慣化させると、それが双方の生きる活力の増大へとつながり、落ち込む気持ちが上向きになることも多いのです。
 さらに、たまには顔を合わせましょう。直接会うということは、電話する時とはまた違った感情が芽生えるものです。その場の雰囲気で初めて伝える話が出たりもします。

 時間を共有することの次に優先順位の上位に来るのは、「話を聞く」ということでしょう。仮に会話がままならない状態でも、人は話をしたいものです。
 当人がうまくしゃべれず、時には家族の我慢も必要となりますが、何かを伝えようとしたいのだということはくれぐれもご理解ください。

祈りの力の強さを知る

 救急に運ばれてきた患者さんに、「早くよくなりますように」と私が手を合わせていると、ある看護師から「先生、縁起でもないからやめてください」と言われました。
 ちょっと待てよ、と内心思いました。
 手を合わせることが、さもお墓や仏壇の前で死者に対しておこなう専売特許のように刷り込まれていますが、そうではありません。
 どんな状況であれ、私たちが手を合わせることで「祈りのエネルギー」を照射することができるのです。
 祈ること自体が、よいエネルギーを放射します。祈りは最も効率的な、想念の集中技法です。
 欧米の病院では、手術台の患者さんに向かって医療スタッフが祈る儀式をおこなうところもあります。手術前や手術後に医療スタッフ全員で手をつなぎ、強い祈りを捧げることもあります。キリスト教圏の国だからというわけではなく、エネルギーとしての効果を知っているのです。
 祈りは重要なエネルギー照射の場ですので、私たちは個人的にもやるべきだと思います。

  かつて米国で祈りの効用に関する調査研究がおこなわれました。