7歳の小学生が
「割引」「お釣り」を知らない!?

 具体的には、バーコード決済では自動的にクーポンが適用される場合があるほか、常にチャージ額から購入代金だけが引き落とされるため、小学生になった7歳児が「割引」「お釣り」が何なのかを知らないという話が出てきている。

 このことに気づいて危機感を覚え、子どものスマートウォッチの支払い機能をオフにする保護者も見られるようになった。

 とはいえ、中国の都市部ではネットスーパーやデリバリーサービスが充実していることから、家庭における日常的な買い物のほとんどがオンラインで完結する。社会勉強のために親が子どもを買い物に連れて行った場合、スーパーマーケットにいろいろな商品があるという気づきを与えられるものの、結局のところ親はスマホ決済で支払いを済ませる。

「財布って何?」中国キャッシュレス社会の弊害、現金を知らない子どものヤバすぎる言動中国の日常風景。親がスマホに夢中になり、子どもが視界に入っていないケースもある(画像は一部加工しています 画像提供:山谷剛史)

 そのため、スマートウォッチの支払い機能をオフにしたところで、子どもの「お金のリテラシー」はあまり養われない。現金対応レジや自動販売機の仕組みを知らない子どもたちや、「欲しいものは何でも自宅に届けられる」と思っている子どもたちも増えているという。

 実際に、「とにかく買いたいものがある限り、(わが子は)どんなに高くても安いと言うんです。高いなんて聞いたことありません」とある親は語る。100元(約2000円)のロボットのおもちゃは安いし、300元でも安い。手元にある現金の減少を体感するわけではなく、ワンクリックや端末の操作で欲求が満たされるため、子どもの欲望はどんどん膨らみやすくなる。

 教育機関が「お金の教育」をおろそかにしているわけではなく、中国では小学校1年生の算数で「元・角・分」の換算を学ぶ(1元=10角=100分)。しかし日々の生活では現金を使わないので、子どもにとっては「単なる算数の問題」の範疇(はんちゅう)から出ず、日常での支払いとはかけ離れた話として捉えられてしまうようだ。

 なので、「換算や計算よりも、10元や100元で何が買えるのかを子どもたちに真に理解させたほうがいい」という意見もある。