2日間で約20万円を
スマホゲームに投入!?

 そして、お金の感覚がわからないまま大きくなった子どもは、ちょっと心配になるような言動を繰り返し始める。家庭内の会話で「お父さんは月にいくら稼いでいるの?10万元(約200万円)?」「これを手伝って。お小遣いでお母さんに1万元(約20万円)あげるよ」といった言葉が子どもから出てきたと報告する親もいる。

「財布って何?」中国キャッシュレス社会の弊害、現金を知らない子どものヤバすぎる言動もはや身近な存在ではなくなりつつある人民元(画像提供:山谷剛史)


 これがエスカレートすると、キャッシュレス決済のアカウントを“悪用”して遊びに使うようになる。中国では最近、9歳の少年がゲームにハマり、2日間で1万元近く(約20万円)をチャージしたというニュースがあった。ゲームを遊びたかったというのもあるが、そもそも1万元がどれくらいの労働や商品の対価なのかわからなかった――というわけだ。

 中国メディアは記事で問題を提起し、解決案を提示している。例えば、お金に関する絵本を読んであげる。子どもの銀行口座を開き、お金の大切さを自覚させる。現金を持たせて個人商店におつかいに行かせる。本物の紙幣や硬貨を用意し、「1元コインが5枚で5元」「10元札5枚と50元札1枚で100元」といった計算に慣れさせるというものだ。

 ただし、一連の記事を参考にしようとしても、やはり親世代が肝心の現金を持っておらず、「親族が集まったときに叔父叔母からかき集めて、ようやく教育用ワンセットがそろった」という笑い話も報告されている。

 こうした潮流の弊害は、幼児や小学生だけでなく大学生にも広がっている。現役大学生が幼い頃はまだ現金が使われていたものの、その後の急速なキャッシュレス決済の普及に伴って金銭感覚を失い、オンラインローンの泥沼にはまるケースがたびたび起きているというのだ。中にはローンを返済できず、身の安全が脅かされている大学生もいる。

 日本ではクレジットカードやバーコード決済の利用が増えつつあるものの、まだまだ現金も使われている。「交通系ICカードに慣れてしまい、切符の買い方が分からない子どもがいる」という話は聞くが、中国に比べればかわいいものである。

 中国で増えている「現金を知らない子どもたち」が、将来どんな大人になるのか気になるところだ。