ここまで言えばもうおわかりだろう。今、「鰻の成瀬」が急成長をした最大の理由はここにある。

「本格的なうなぎをリーズナブルに提供する」ということは大手牛丼チェーンやファミレスでもできる。極端な話、自分たちでもっと安い養殖うなぎを海外から仕入れて、「鰻の成瀬」で使用しているような調理器を導入すれば可能だ。

 ただ、それをやったとて、牛丼屋やファミレスであって「うなぎ専門店」ではない。「鰻の成瀬」に高齢の客がひきつけられ、リピーターになっているのは、専門店を構えて「やっぱりうなぎは専門店で食べたいよね」という客層にしっかりと取り込んでいるからだ。

 つまり、「安いうなぎ専門店」という競合が少ないブルーオーシャンで、「本格的なうなぎをリーズナブルに、といえば」というポジションを確立したということが大きいのである。それを盤石のものとするため、出店をここまで急いでいるのではないかという気もしている。事実、「鰻の成瀬」とコンセプトは同じだが、より「安さ」を強調した「後発組」もあらわれている。先行者利益を享受するには早く“全国制覇”をした方がいいということだろう。

労働力の高齢化にも対応

 そこに加えて、「鰻の成瀬」はもうひとつ大事な「高齢化対応」に成功している。それは冒頭で触れた「軽量オペレーション」だ。

 よく言われているが、日本の人手不足はこれからが深刻だ。そこで特に危機的状況となるのが、日本の外食が依存してきた外国人労働者だ。今や中国や韓国はもちろんASEAN諸国にも賃金水準が抜かれていく中で、日本の「安くてうまい」を実現するために低賃金で働く労働者の確保は難しくなっていく。