そこで、期待されるのが「高齢者」の活躍だ。つまり、会社を定年退職したようなシニアに外食業界でどんどん働いてもらうのである。「鰻の成瀬」のようにボタンひとつで調理できる、というのは70代や80代の高齢者バイトにとってもありがたい。もちろん、フランチャイズのオーナーとして、高齢者が起業をする場合も同じだ。

 つまり、「鰻の成瀬」が急成長しているのは、「高齢者が大好きなメニューを、高齢労働者が調理して提供をする」という、これからの「外食の主流」をひと足早く先取りしている、ということもあるのではないか。

 さて、こんな調子でいろいろ好き勝手言わせていただいたついでに、高齢者予備軍として「鰻の成瀬」に、ひとつお願いをしたい。

 味も価格も満足だし、なんやかんやとリピーターになっているが、ひとつだけ不満なのが、「鰻を焼いている時の煙」がないことだ。あの匂いを嗅ぐだけで、店に吸い込まれそうになるし、食欲もそそられる。

 あのような見事な調理器も用意できるのだから、あの煙と匂いを再現できるような機器も開発できるはずだ。

 もし本気で「鰻専門店チェーンで天下を取る」というのなら、ここは絶対に欠かせない。ぜひ前向きにご検討していただきたい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

「鰻の成瀬」脅威の出店ラッシュ、「安くてうまいだけ」の牛丼チェーンが絶対に真似できない独自戦略