超人気歯科医院でも、インターネットの口コミ点数が低評価の場合がある一方、点数が高くても危ない歯科医院もある。ネット口コミを見極め、自分に合った歯科医院を探し当てるためにはどうしたらいいのか。特集『歯医者「減少」時代』(全26回)の#16では、歯科医院を経営するベテラン歯科医師3人による座談会の前編をお届けする。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
1日80人診療する超人気医院でも
グーグル口コミ「星1.9」の低評価
――先生たちの歯科医院はインターネットの口コミの評価は高いですか。
A 患者の求めるものに広く笑顔で答える八方美人なタイプの歯科医院は点数が高くなりがちですよね。対してうちは治療項目を絞り込んで、合わない患者は排除している。その結果として、点数は低くなっています。
先日、30年前にやったブリッジ(失った歯の前後の歯を削って失った部分の歯に橋を架けるように歯を補う治療法)で、支えていた歯が揺れるからどうにかしてほしいという方が来院しました。
定期検診をずっとしていなかったんでしょう。固定できる歯がもう残っていなかった。だから「全部抜歯してインプラントにする選択肢があるけど、治療費は車買えるレベルになる。何より難しいので僕にはできません」と丁寧に説明した。結果、グーグル(大手インターネット検索サイト)の口コミで星1がつきました(笑)。
何度説明しても話をかぶせてきて、こちらもイラッとしたのはある(笑)。でも、全く話が合わないとか、その人に治療をやると後々トラブルになるのが目に見えているケースにはなるべく関わりたくない。
B うちは先生のような医院が拒絶された方も受け入れるような、大衆迎合型(笑)。星を気にする。僕らだって海外旅行でレストラン探すときにウェブの口コミ絶対見るじゃないですか。患者さんに「うのみにするな」と言っても、もはや切っても切れないものだと思います。
1000キロメートル離れた県の人から先日、星1付けられたんですよ。明らかにいたずら。こういうかたちで星1が少々付いても薄める対策として一時期、患者さんにアンケートとして「グーグル口コミで評価してほしい」と頼んでいました。「何か気になることがあったら書いてくださいね」って。お願いに応えてくれる患者さんは、そうそう低評価にはしてこない。
まあ口コミが高い医院では、接遇面で最低な対応をされることはないと思います。「気に入らないなら帰れ」というようなことは絶対しない。ただ、腕がいいかは別。
例えば、『ミシュランガイド』(仏大手タイヤメーカー、ミシュランが発行するレストランガイドブック)で高評価を得ようとすると、内装など店の雰囲気や、店員のマナーや振る舞いもチェックされる。純粋に料理の味だけで比較すると、最高評価の三つ星よりも、一つ星の方がおいしいというケースは間々ありますよね。
A 分かる。
B 歯医者さんも一緒で、愛想は最悪だけど、ものすごいうまい先生っている。それこそ「俺が全部治すから、黙って俺に口開けとけ」っていうタイプの人。
僕の先輩がまさにそれで、1日80人診察する超人気医院だけど、グーグル口コミ星1.9ですから。不愛想というのもあるけど、多忙だと荒い対応になりがちで、どうしても低評価が多くなるんですよね。
C 僕も、患者さんに職人タイプの先生を紹介すると、後から「すごい怖かったんですけど」って言われることが多い。同業者からの評価はめちゃくちゃ高いんですけど、うがいしたら怒られたとか。「ごめんね、でも腕はいいから」って謝っています。
B そういう先生は宣伝に力を入れてなくて、余計な患者は診たくないから1日何人までとかにしていることも。ネットの口コミでは見つからない方々です。
――患者側は、できればそういう先生を探り当てたい。でも、そういう先生は口コミの評価も高くないから、自力でたどり着くのは難しいですよね。