低評価のコメントの中で
同じ症状で受診した人を探す

A グーグル口コミだけで見抜こうとするなら、低評価のコメントの中に、自分と同じ症状で受診した人を探してみるのはどうでしょうか。

C アマゾン(大手通販ウェブサイト)の商品レビューでもそういう使い方しますよね。

A 例えば、上の歯が揺れているから受診したけど、その日のうちは固定してもらえなくて、まず歯周病治療が必要って言われたから星1。歯周病の治療をするべきだという、当然の対応をしていますよね。患者の顔色を見て曲げることなく正しいことを通せる歯科医師だと判断できる患者であれば、その歯科医院に行くのは正解。このコメントに共感する患者は、行かなくて正解です。

C ネットの口コミをうまく活用するには患者さん側のリテラシーが必要。低評価の理由を見て「やめようかな~」って思う人は来てもらわない方が、医院側としてもありがたい。

患者の要望を丸のみする医院は
口コミが高評価でも危ない

A ただ、腕の良い先生だからといって、ずっと通いたいと思えるかはまた別でしょうね。治療完了後には定期検診に移行する。そのまま通院するとなると人間性、受付の雰囲気の良さの方が重要視されてくる。

 歯科医院選びはよく結婚に例えられます。全てが全て理想の人って存在しない。妥協点をどこに置くかが大事になります。

B 接遇面や技術だけじゃなくて、痛くなければ良いという患者さんも多いですよね。あと、抜かない歯医者が良いという風潮もある。特に矯正。

C “非抜歯”を売りにする先生は多い。抜かずに治療できるケースもあるんですけど、抜くべき症例もある。これを説明してもなかなか分かってもらえない。

 SNSのインフルエンサーの影響も大きい。X(短文投稿型SNS)に美容アカウントの方が「歯を抜かずに矯正できた」と書き込んでいて、女子大生の患者さんがそれに影響されて大変でした。スマートフォンの画面を見せてきて「先生の診断で大丈夫なんですか」と言ってくるんです。

 口元の突出感があったので、抜歯は避けられないと説明した。で、診断後来なくなりました。矯正自体を諦めたのならいいんですけど……。彼女の言う通りに非抜歯で治したのだとしたら、大変なことになっちゃう。

B 患者さんの希望を丸々のんでしまうところは危ない。そういうところに限って、口コミは高い傾向にあるんだけど。

A 「虫歯を取り切らないで済みました」「削らずに治しました」とか言われる方。いざ口の中を見ると全く治っていなかったりする。

“最先端”よりみんながやっている治療が正解
最低2年は様子見すること

C 聞いたこともない治療法を打診してくる患者さんもいます。「オゾンを使って、削らないで虫歯を治せると聞いた」という方が最近来た。そんな治療法、初耳でした。

B 一時期ありましたよ、歯周病もオゾンで治せるとかって。普及してないということはどうなんでしょう。良いならみんな使うから。

A MTA(歯の神経の保存療法)なんかは登場して2年くらいで世界中に広がった。インビザライン(マウスピース矯正の一種)も広がった。かつてのインプラントもそう。

B ちょっとしたコツなんかはどこの医院も持っていると思うけど、治療法として100院に1院、1000院に1院しかやってないようなものは疑ってかかるべき。基本的にみんながやっていることが正しい。夢みたいな治療法はないんです。最近でもレーザーで虫歯が治るとか、テレビが何であんなに取り上げてるのか僕には分からない。

C 「アメトーーク!」(テレビ朝日系列のバラエティー番組)で矯正芸人の特集が放映された後、あり得ない数の初回相談がありましたから、テレビの影響は本当に大きい。

A 僕らが聞いたこともないようなものがメディアでもてはやされることはよくあるけど、最低2年は様子見した方がいいですね。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Kanako Onda, Graphic:Daddy's Home