「どうしたらいいのか?」
悩み抜いた夫婦が最後に重視したもの

 さて、こうしたデータに鑑み、山崎さん夫妻はどのような決断を下したのでしょうか。前述のように、マンションに買い替えるなら住宅ローンを借りないと貯金がゼロになってしまいます。また、経済面では戸建のほうが価値があるようです。山崎さん夫妻は悩みます。

 山崎さんの夫はリウマチなどを患っており、戸建だと冬は冷えて指が痛くなるという健康上の問題を抱えていました。高齢化に伴い、これからも健康リスクはますます増していくでしょう。

 そうした現実に鑑み、夫妻は「終の棲家」をマンションに決めました。その代わり、退職金の1500万円のうち1000万円を購入時の頭金にし、500万円だけ通常の住宅ローンを借りました。目下金利は上昇傾向にありますが、月に5万円程度の返済ですから、それほど大きな負担にはなりません。万一、途中で資金繰りが厳しくなっても、時間をかけて、最長で80歳までに返済すればいいのです。

 山崎さんが考えたように、終の棲家を選ぶうえで健康は大事なポイントです。

 住民が長生きするのは、マンション、戸建て、アパートの順で、マンションのほうが寒暖差がない分、寿命が長いという調査もあります。

 ただし、タワマンは災害時にエレベーターが使用できなくなるリスクもあり、高齢者は孤立しやすくなるため、お勧めできません。山崎さん夫妻の場合は、寒さが夫の健康上よくないので、マンションを選択して正解でしたが、集合住宅のため隣近所や駐車場の騒音が気になる人もいます。自分の体調や貯金などを慎重に考え併せて、「終の棲家」を選ぶべきでしょう。

 実は、持ち家・賃貸の住民ともに、現在住んでいる街が好きかどうかが「幸福度」の大きなポイントになっているという側面もあります。最も幸せなリタイヤ生活は、近所に子どもが住んでいることというデータもあります。老後を見据えて、幸福度を上げる方法を今から探しておくことも大事かもしれません。