有料か無料か、それが問題だ

 日経には、大半の記事を無料で提供するという戦略はマネできない。東洋経済オンラインは、この「無料」という日経が参入できないカテゴリーで、圧倒的な地位を確立した。また、広告収入やPV数の多いサイトを活用して、リアルイベントでも大きな利益を上げているとされる。

 最近、好調なのがダイヤモンド・オンラインである。このメディアは、日経のような「有料デジタル」と、東洋経済オンラインのような「無料メディア」という複数の分野で成長を続けている。特に「有料デジタル」の分野では、企業の内幕に迫るスクープを次々と打ち出している。

 日経は企業について「容赦のないスクープ」をあまり公開しない。記者が経営者に近づくことは多いが、スクープの多くは新社長の名前に関するものであり、重要な情報を知っていても書かないのだろう。

 ダイヤモンドは、この日経が手を出さない有料情報分野で成功を収め、さらに日経が進出していない無料ニュースにも力を入れている。この戦略は現時点で非常に効果を上げている。

 経済メディア全体を振り返ってみると、やはり、弱者の戦略とも言えるかもしれないが、巨大な日経帝国が手を出してこない分野で各経済メディアが戦いを挑んでいる状況が浮き彫りになる。

 日本では経済メディアが日経によって事実上独占されてきたが、今後は誰かが風穴を開け、堂々と日経帝国に対峙できる存在が現れることを期待したい。このように、強力な競合相手がいるために手を出しにくい「ニッチな市場」で逆手を取る方法は「柔道戦略」(Judo Strategy)と呼ばれている。