ネットフリックスの「柔道戦略」とは?

 この戦略は、柔道の原則である相手の力を利用して自分に有利に働かせるという考え方に基づいている(柔道の原則が本当にそうなのかは別にして、ハーバードビジネスレビューなどにはそう説明がある)。かつてネットスケープ社が、マイクロソフトのインターネットブラウザ市場を一時的に奪った際に注目された戦略だ。

 当時のネットスケープ社は、有料であったインターネットブラウザを一定期間無料で提供することで、マイクロソフトを苦しめた(最終的にはマイクロソフトがブラウザを完全に無料で提供し、ネットスケープを撃退した)。

 他にも「テスラ」は柔道戦略の好例である。既存の自動車メーカー(トヨタ、GM、メルセデスベンツなど)が市場を完全に支配している分野では戦わず、EV(電気自動車)という新しい市場に焦点を当てた。

 初期には高価格のモデルに注力し、技術力とブランド力を高めた後、EV市場で圧倒的な地位を獲得し、手頃な価格のモデルを展開するようになった。

 ネットフリックスも同様だ。当時、DVDレンタル業界には「ブロックバスター」という巨大な競合が存在していたが、ネットフリックスはオンラインでのDVDレンタルという新しいビジネスモデルに注力した。

 ブロックバスターはリアル店舗に力を入れていたため、オンラインに参入するのが遅れ、ネットフリックスが強固な顧客基盤を築いた後での参入となった。

 さらに、ネットフリックスはアルゴリズムによるおすすめ機能や、無制限レンタルのシンプルな料金プランといったオンラインユーザー向けのサービスを提供し、その後ストリーミングサービスへと移行。現在の姿へと成長し、ブロックバスターは最終的に倒産した。