実は日本の為政者たちの頭の中では、巨大地震というのは他国との戦争などと同じく、「国家存続の危機」という認識だからだ。つまり、今の政府、国家体制が終焉を迎えてしまう恐れがあるので、権力の座にいる者たちとしては敏感にならざるを得ないのである。

「そんな大袈裟な」と呆れる人も多いかもしれないがこれは地震発生の確率のように盛った話ではない。南海トラフ地震、あるいは首都直下型地震は、人口密集地隊が被災をするので、東日本大震災などと比べものにならないほど膨大な数の被災者がでるので当然、比べものにならないほど膨大なカネがかかる。それは国家財政に大きなダメージを与えるほどなのだ。

 では、政府はこれらの地震が起きた際の経済的被害をどのように試算しているのか。まず、南海トラフ巨大地震(陸側ケース)の場合、171.6兆円。首都直下型地震は約95兆円を見込んでいる。

 東日本大震災の被害額は約16兆9000億円なので、その10倍以上というすさまじい額に呆然としている人も多いだろうが、実はこれでもかなり「大甘」な見通しだ。

 政府が想定しているのは、建物やインフラが壊れたなどの「直接被害」に加えて、全国の経済活動への影響だ。つまり、「巨大地震」単体の被害しかはじき出していない。現実は住むところがなくなった人々や、仕事を失った人々があふれかえるので、仮設住宅や生活支援、さらには地域の産業復興などで莫大なカネがかかる。しかも、今の東北の被災地を見てもわかるように復興まで長期間に及ぶ(国土交通省「防災・減災、国土強靱化 ~課題と方向性~」)。

 では、そういう現実的な問題を考慮すると、どれほどのカネがかかるのか。公益社団法人「土木学会」が阪神淡路大震災で神戸市が受けた経済被害を参考にして、20年間でどれほどの「長期的被害」になるのかを算出しているが、そこには驚きの数字が出ている。