創業者の死去、支払い遅延と重大な事態が相次ぎ、取引先が本社や営業所に押し寄せた。電話しても自動音声に切り替わり、連絡が取れない状態では無理もない。一部の取引先には「数日後に営業を再開する」との連絡もあったようだが、全国の営業所は次々と閉鎖された。そして、4月10日に1回目の手形不渡りが発生。2回目の不渡りも避けられず、4月25日に銀行取引停止処分を受けた。
当時の取材によると、ホクシンメディカル側は支払遅延について、創業者の死去で口座が凍結され、引き落とされなかったのが原因としていた。
仕入れ先からの取引中止の連絡に
状況を把握できない従業員
複数の元従業員は口をそろえ、「3月の最終週頃に仕入れ先から次々と『これ以上の取引はできない』と連絡が入った。何が起きているのかわからなかった」と混乱ぶりを吐露した。そして、「4月に入っても会社から今後の方針は説明されず、ほとんどの社員が4月20日と30日付けで解雇されることがわかり、営業停止を悟った」という。
取引先の関係者は、「ホクシンメディカルの取り扱い品は手術に用いられ、供給がストップすると人命に直結する」と語り、「ホクシンメディカルの従業員さんは混乱が起きないように最後まで尽力してくれた」と現場の対応に感謝する。
元従業員の一人は「会社は(行き詰まり後も)一部の取締役の指示で動いていたようだ。新代表のX氏は創業者と同姓で、一部では息子と言われていた。だが、従業員の間では創業者に子どもはいないと認識しており正直よくわからない。X氏の姿を見た従業員はいないと思う」と不審げに語った。
X氏はどういう人物なのか。取材を進めると、ホクシンメディカルなどが被告となっている訴訟に行き着いた。その訴訟資料には、創業者とX氏は親子であることが記載されていた。