従業員や取引先への対応は放置
混乱が続くホクシンメディカルの倒産

 ホクシンメディカルは、行き詰まりを表面化させた当日、「創業代表者の逝去により、現在、破産もしくは廃業手続きを検討しております。対応は追ってご連絡いたしますので、いま暫くお待ち頂ければと思います」とHPに掲載した。

 それから約3カ月、記載内容に変更はなかったが、最近になって突如、「再建に向けて鋭意努力しております。整理状況や進捗などを適宜、情報公開していく予定ですので引き続きよろしくお願いいたします」とHPで告知した。

 一方で8月上旬、TSRの取材に応じたホクシンメディカルの元従業員は、「未払いの給料はそのまま放置されている。労働基準監督署からも(事実上の)倒産の認定が下りていない」と不安げに語った。また複数の債権者は、「ホクシンメディカルとの取引額は小さくない。放置状態では債権処理もできず非常に困っている」と憤る。

 こうしたなか、TSRの調査で8月8日までに都内の弁護士がホクシンメディカルの債権調査を受任していることが判明した。受任した弁護士は「現在、実態把握を進めている段階だ。(HPに掲載された)再建に関しては、銀行取引停止や従業員の離職もあり、出来るかは分からない。ただ、年内までに方向を決定したい」とコメントした。その上で、「取引先や従業員などに迷惑をかけないよう誠意を持って対応する」と回答した。

 進展がなかったホクシンメディカルの「事後処理」が動き出した。だが、創業者が保有する株式の相続が決まらなければ、株主総会も開くことも難しく、事後処理は容易ではない。

 1986年の創業から関西の業界有力企業に上り詰めたホクシンメディカルは、創業者の死去を発端に、あっという間に崩壊した。保有株式や連帯保証債務などの相続は個人の問題とはいえ、会社の従業員や取引先などのステークホルダーへの対応は放置されたまま。企業統治(コーポレートガバナンス)と事業承継のつまづきがどれほど多くの人に混乱を与えるかを教えている。