大バズりした「よくばりフェス」 に隠れた
サーティワンの“真の狙い”は?
今年の5月、このテイクアウト需要が関係すると思われる面白い出来事がありました。サーティワンが実施した「よくばりフェス」というキャンペーンが大当たりした結果、一時的に専用カップが品薄になって販売を停止するという事態が起きたのです。
通常570円で3個のポップスクープサイズ(スモールサイズよりやや小さいサイズ)のアイスを楽しめるトリプルポップという商品があるのですが、このよくばりフェスではこれを1個100円でトータル10個まで増やすことができることになりました。
簡単にいえばトリプルポップをポップ10にしたうえでそれが1270円で楽しめるのです。通常商品ですとバラエティパックでスモール8個2240円、12個3200円ですから、それより小さいサイズとはいえ10フレーバーで1270円というのは非常におトクでした。
キャンペーンはそのおトク感で成功したのでしょうけれども、このキャンペーン、販売促進の観点でみてもサーティワンにもの凄くメリットのある企画だったでしょう。なにしろ固定客であるファン層に対して、10種類のフレーバーを自宅で楽しむ経験をしてもらうことができたのですから。
これは、ストーリーとしての戦略がサーティワン全体で一貫していることを意味します。
冒頭でお話ししたように、長期的に顧客のファン層を拡大していくには子どもの頃から舌に味を覚えさせることが大切です。さらに歴史の長いサーティワンのようなお店では、固定ファンになった母親が子どもをお店に連れてくるように仕向けることが重要です。
そして高い価格実現性を維持するには、商品のポジショニングが重要です。「これはアイス」とポジショニングするよりも「これはスイーツ」「特別なスイーツ」とポジショニングできたほうが価格実現は高くなります。
一方で酷暑の季節を迎えるとアイスについて顧客の来店飲食率は下がります。そこで暑さが来る前にテイクアウトを中心にプロモーション価格で10種類のフレーバーのアイスをファンが自宅に持ち帰るように仕向けたというのがこの5月企画の戦略ストーリー的な意味合いだったわけです。
実はわが家にもサーティワンの熱狂的なファンが1名いて、シャトレーゼの安価で美味しいアイスを推奨する私は結構家庭内調整に苦労しています。とはいえ、今晩のデザートはサーティワンだということになった日は、私もそれなりに珍しいフレーバーのアイスを楽しんでいます。
サーティワン、しばらくは順調に拡大基調を続けそうです。