9月の自民党総裁選への出馬を表明した石破茂氏を「国民人気は高いが、力はない」と評するのは政治ジャーナリストの田原総一朗氏。「影響力が強い人物」の代表として森喜朗元首相を例に挙げながら、「政治家の力の源泉」を語る。また、政権交代について「千載一遇のチャンス」「起こさなきゃいけない」と言う田原氏だが、同時に「野党は政権交代する気がない」と話す。激動の政界の今を分析してもらった。(構成/梅澤 聡)
麻生太郎や茂木敏充にも共通する
「発言力」の源泉
――渡辺恒雄さんは『自民党と派閥』の中で、派閥の機能として、人事、活動支援、選挙支援、総裁選の4つを挙げています。田原さんは、派閥の存在にどのような意義を見いだしていますか?
僕自身は、派閥の存在自体は悪いことじゃないと思っています。自民党にはさまざまな考えを持つ人たちが集まっていますが、総理大臣に対して異を唱えたり、意見を述べたりする場合に、議員個人では声が届かない。
だから仲間を集めて、集団として反対意見を結集する必要がある。つまり派閥というのは、「総理大臣という権力に対抗するための集団」なんです。その意味では、派閥は必要なんですよ。
――とすると、自民党の派閥が解消された現在の状態を、田原さんはいいことだと思っていない?
時の権力に対してものが言えない、というのは全体主義ですよ。その証拠に、中国やロシアに派閥はないじゃないですか。
政権の政策に反対したら逮捕されて、下手したら死刑ですよ。そんなことになったら困るでしょう? 派閥がなくなるってことは、こうした全体主義社会に近づいていくということなんです。
――自民党は裏金問題で国民の信用を失いました。こういう状態になって、政権交代は起こると思いますか?