自分自身のためではなく
「人の期待を裏切らないように頑張る」日本人

 モチベーションというのは、非認知能力の一種である。非認知能力は、能力の発揮の仕方や開発の仕方を大きく左右する。すでに開花している能力を十分に発揮できるかどうかも、潜在能力を開発できるかどうかも、非認知能力としてのモチベーション次第ということになる。

 では、モチベーションを高めるにはどうしたらいいのだろうか。モチベーションに影響する要因にはさまざまなものがあるが、とくに日本で有効なのが「期待効果」である。

 アメリカを中心に発展してきたモチベーション理論では、ともすると見過ごされがちだが、日本においては人間関係の要因がモチベーションに及ぼす影響は、非常に大きい。日米比較研究においても、アメリカ人が自分自身のために頑張るのに対して、日本人は人のために頑張る、つまり「人の期待を裏切らないように頑張る」といった傾向があることが分かっている。オリンピックで活躍するような選手の言動からも、それは明らかだろう。

 親や先生に納得してもらえるように頑張る、あるいは親や先生をガッカリさせないように頑張るというのは、勉強にしろ、部活や習い事にしろ、だれもが子どもの頃に経験したことがあるのではないだろうか。同様に、上司の期待を裏切らないように頑張るというのも、多くの人が経験しているはずだ。

「君に期待してるよ」とハッキリ示すことで
モチベーションが上がる

 そこで大切なのは、部下に対して期待の視線を向けるだけでなく、期待していることがはっきり伝わるような言葉がけをすることである。

 実際、前述の管理職の場合でも、部下に期待を示すことで、単に与えられた職務をこなすだけでなく、自ら工夫をしたり、後輩に仕事を教えたりするようになり、そのために必要に迫られて知識の吸収のための勉強にも積極的に取り組むようになった。