回答のポイントは、「ユーザーの現状」と「あるべき姿」のギャップを埋めることです。
ユーザーを想像し、本の内容を「忘れないようにする」とはどのような状態か、具体的なイメージしましょう
以下が解答例です。
「解くべき問いは何か」を考える
まず、このアプリを必要とする人について想像しますと、私は「読んだ本の内容をすぐに忘れてしまい、仕事などに活かせていない」という悩みを抱えている方ではないかと考えました。
つまり、趣味ではなく、教養として専門書やビジネス書を読んでいるけれど、なかなか知識として定着できない社会人にニーズがあるアプリだと捉えました。
したがって今回は「本の内容を忘れないようにするアプリ」を「本の内容を読者に知識として定着させ、成長を実感できるアプリ」と捉えて検討することにします。
本の内容が読者に定着するまでのプロセスを考える
上記で整理した「現状」と「あるべき姿」のギャップに注目すると、知識が定着しないことが問題だと分かります。
そこで、試験勉強の経験を念頭に置いて、知識を習得するプロセスを次の4つに整理します。
プロセスに沿って課題と打ち手(=アプリの機能)を検討する
ここで、プロセス1は未だ本を読んでいない状態と言えますので、プロセス2の状態からプロセス3へ、プロセス3の状態からプロセス4へ移行するためのアプリの機能を検討します。
プロセス2→3:
本の中のキーワードを聞くと、内容が思い出せる状態へ
読者の頭の中で本の内容が知識として定着しつつある段階であり、ここでは本のキーワードと内容をしっかりとリンクさせることが重要です。
そのためには次のような機能が必要だと考えます。
【要約投稿(メモ)機能】
その本のキーワードと、キーワードの補足や解説を100文字程度で要約して投稿(メモ)する機能。投稿された内容はユーザー間で共有でき、いいねやシェアに加えて、自分用のメモに追加することができる。
【思い出し通知機能】
反復による記憶の定着が自然にできる機能として、先ほどの要約した内容が、その投稿から3日後、7日後、1ヵ月後、1年後に「思い出し通知」という形で通知される。読者はこの通知を見て、定期的に内容を思い出すことで、徐々に知識として定着させることができる。
プロセス3→4:
本の内容を仕事などで活かせる状態へ
本の内容を忘れたくない人のニーズ(=本の内容を仕事などに活かしたい)を踏まえると、単に内容を忘れないだけではなく、本から得た知識を実際に活かせるところまでアプリで支援できると素晴らしいと思います。
たとえば、次のような機能があると効果的ではないでしょうか。
【活用事例投稿機能】
自分のメモを見返すタイミングで過去の投稿に紐づけて、活用事例を記録できる機能。仕事などで活用できた場面や今後活かせそうな場面などを記録し、本の内容を自分の仕事などにつなげることで、単なる知識ではなく、「実践知」としての定着をサポートする。
検討した内容をまとめて、総括する
これまでの検討をまとめますと、私は本を読んで得た知識を実践できることを目的として、求められるアプリの機能には次の3つがあると考えます。
・要約投稿(メモ)機能
・思い出し通知機能
・活用事例投稿機能
以上となります。ありがとうございました。
面接官からの質問
――主な利用者は社会人とのことでしたが、このアプリはどのような社会人が利用すると思いますか?
20代から30代前半の真面目な社会人が利用すると思います。というのも、本から得た知識を実践したいと思う方は、まだまだ学ぶことが多く、成長意欲も高い若い年齢の方と想像されます。
また、今回提案した機能は自ら書籍で得た知識や実践したことなどを投稿しなければならないため、几帳面さが求められると考えます。
――同じニーズを持つ人々により多く利用してもらうためには、他にどのような機能が必要だと思いますか?
今回のアプリは相当几帳面な社会人でないと利用しない可能性があると感じています。一方で、几帳面ではないけれど、本から得た知識を実践したいと考える社会人は多く存在すると考えます。
したがって、同じようなニーズを持つ人々により多く利用していただくためには、本をしっかり読んで記録しなくても実践的な知識が得られるような機能が必要です。
たとえば、書籍の要約サービスと連携して、読むべき本の要約を提供するような機能があると大変便利ではないでしょうか。
――いくつかの機能を挙げていただきましたが、より重要な機能は何でしょうか?
私は、本の内容を実践する以前に、そもそも内容が頭に残っていないことが多くの人の悩みであり、プロセス2からプロセス3に移行する(本の中のキーワードを聞くと、内容が思い出せる状態となる)ところが第一に取り組むべき課題と考えています。
したがって、そのステップを支援する「要約投稿(メモ)機能」や「思い出し通知機能」が重要だと考えます。
(本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)