今、学生や転職者から最も人気の就職先の一つがコンサル業界だ。数多くの志望者の中から有望な人材を見抜くために、この業界にはフェルミ推定やケース面接と呼ばれる独特の入社試験がある。一握りのチャンスを掴む内定者は、面接でどんなことを話しているのだろうか。
新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームで実際に出題された問題を集め、現役で活躍するコンサルタントに解答してもらうことで、コンサル流の思考法をノウハウとして凝縮した1冊だ。就活対策にはもちろんのこと、思考力のトレーニングにも最適だ。本稿では「ケース面接での話し方」について本書から抜粋して紹介する。
フェルミ推定問題と同じく、ケース面接問題においても論理的思考力や自身の考えをわかりやすく伝える説明能力、面接官から「一緒に働きたい」と思われるような素直さや高い人間性は評価されます。
それらに加え、ケース面接問題に特有の評価ポイントとして次の3つがあります。
(1)論点思考
一般的に、面接官は問題を提示するのみで、「問題解決に向けて、このようなことを検討してほしい」といった指示はないため、志願者から問題解決において検討すべき論点を提示し、問題解決の全体像を面接官と共有することが求められます。
また、面接官とのディスカッションにおいても、面接官に確認しておくべき論点は何か、面接官とともに議論すべき論点は何かを考えながら面接官に対して確認や質問を行い、議論を進行していくことが期待されています。
一般的な面接のように、面接官からの質問に1問1答で回答するようなものでは決してないため、常に「論点は何か」を自ら考え、面接官と共有しながら議論をリードする主体性を持って臨みましょう。
(2)仮説思考
仮説とは「自分が現時点で最もふさわしいと考える仮の答え」を意味しますが、ケース面接問題ではこの仮説を考えることができないと一歩も前に進むことができません。
問題解決においては、次の3つの仮説思考が重要となります。
①クライアントが置かれている状況を適切に把握するためには、どのような切り口で分析すればよいか(現状分析の仮説)、
②与えられた問題を解決するための課題にはどのようなものが存在し、その中でも特に重要で本質的な課題は何か(課題設定の仮説)、
③本質的な課題に対する打ち手にはどのようなものがあり、クライアントのリソースや置かれている状況などを踏まえると優先度の高い打ち手は何か(打ち手立案の仮説)
これらは全て、唯一の正解があるわけではなく、企業経営の実務においても、限られた情報と自身の洞察から仮説を立てて、戦略を具体化し、実行と振り返りを繰り返します。
プロのコンサルタントである面接官を前に、自分の仮説を伝えることは勇気のいることかもしれませんが、
「私は、○○(仮説)のような理解から、クライアントは○○(仮説)から取り組むべきと考えました。この点について、さらに検討を進めてもよろしいでしょうか?」
などと面接官に仮説を共有し、ディスカッションしながら自らの仮説を磨いていくマインドで臨むとよいでしょう。
なお、実際のケース面接で見られる不十分な点として、何をもってその仮説を導いたのかが抜け落ちており、論理的に仮説を伝えられない方が多くいます。
仮説思考とは、単なる思いつきを発言することではなく、しっかりと状況分析を行い、一定の事実情報に基づいて論理的に考えられる仮の答えを設定し、それを実行、修正していく考え方です。
しっかりと自分が認識している事実情報や前提を面接官と共有し、それを踏まえながら、どのような考え方で仮説を導いたのかを論理的に話すようにしましょう。
本書の問題に取り組む際にもぜひ意識してみてください。
(3)思考体力
ケース面接問題では、限られた時間で問題解決の進め方を考え、クライアントの現状や本質的な課題、優先度の高い打ち手に対する仮説を提示し、面接官とのディスカッションをとおして提案内容を磨いていくことになります。
途中で、面接官からは次のような問いがなされ、自分の思考を広げたり、深めたりしながら考え抜くことが求められます。
このような、物事をいかに多面的に深く考え続けられるかという思考体力は、ロジカルシンキングなどのスキルと同じくらい、いや、それ以上に実務では重要となってきます。
思考体力のある方は、高い集中力を維持して長時間考え続けられるだけでなく、短絡的に答えを出さずに多面的に物事を見ようとすることから意思決定で失敗することも少なく、何より考え続けることが仕事であるコンサルティング業務にストレスを抱えすぎず、楽しみながら成果をあげることができます。
それゆえ、面接官はさまざまな質問をとおして志願者の思考体力を確認し、適職性を評価しています。
(本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)