名著『学問のすすめ』は、
ソーシャル・イノベーションの先駆けだった!?
明治初期に超ベストセラーとなった『学問のすすめ』では、ソーシャル・イノベーションの先駆けを感じさせる、効果的な3つの武器が勧められています。
(1)全員の課題だという「当事者意識」を高める
社会組織全体から、新しい発案やアイデアを生み出すために、諭吉は国家の出来事が国民全員の課題であることを論じています。
私たちの所属するビジネス組織や社会貢献活動でも、これまで従事した人たちとは異なる分野の専門家を巻き込めるような、広い範囲での当事者意識を醸成することは、新たな視点や解決力がその問題に注ぎ込まれることになり、飛躍を生み出すイノベーションが起こりやすくなるのです。
(2)周囲を変化させる「手本」を見せる
これはすでにご説明したことですが、集団や周囲を変化させるには、みんなが真似したくなる「良い手本」をまず上手に生み出すことが重要です。
憧れる手本もないのに、言葉だけで「あの方向に進むべきだ!」と強くあなたが主張しても、相手には嫌々やらされているという気持ちだけが先に立ち、自ら変化しようとする気持ちや勢いが生れません。これではこちらが疲れるばかりで、説得や変革の効果はほとんど期待できないでしょう。
自然にブームになる商品や社会現象も同じです。周囲が憧れる、真似したくなる「良い手本」があるからこそ、自発的な変化を生みながら波状的に広がりを見せていくのです。
(3)「人的ネットワーク」を活かす
諭吉は研究室に閉じこもる、閉鎖的な学究ではなく、実社会に飛び出して世の中を変革することを進めた人物でした(マイクロクレジットの創造者・ユヌスとも類似する点)。彼は理論があっても、周囲に信頼される「人望」がない人物は、何一つとして事を成し遂げることはできないと『学問のすすめ』最終章で語っています。
また「多くの分野に友人知人をつくり続けること」も大切であり、そのためできるだけ多くの分野に常に関心を持つことを私たちに勧めています。
人が溢れている世の中で、人を嫌いになり避けていれば何を成すにも不便です。諭吉は「人間のくせに、人間を毛嫌いするのはよろしくない」と述べて、人と付き合う能力が社会における重要な要素だと140年前の時代から、私たちに教えてくれています。
これら3つの武器は、個人から始まりながら「集団を変革する」ための効果的なツールとして使用できるものです。たった一人の個から始まる変革が、より大きな集団に良い影響を与えて、結果としてさらに大きな成功や幸せ、豊かさを生み出すことが可能になる。
このような「変革」あるいは波及効果の高いソーシャル・イノベーションこそ、現代日本で私たちが求めている活動ではないでしょうか。『学問のすすめ』は140年前にソーシャル・イノベーションの要素も兼ねた、良い未来を生み出す変革の教科書でもあったのです。(第8回に続く)
次回は5月7日更新予定です。
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