量産車として世界最高の空力性能を実現

 まず見た目。

 一見するとクーペのような流線型。「ワン・ボウ」と呼ばれる、フロントから屋根部分、さらにはリアエンドまで続くラインを1張りの弓にようにつなぐファストバックのシルエット。電費を向上させるために計算し尽くされた美しい形状は数値にも現れていて、空気抵抗係数(Cd値)は量産車として世界最高の0.20を達成している。数多あるスーパーカーにおいても、ここまで優れた数字を出しているクルマは今のところ存在しない。

 高級セダンが世界最高の空力性能を実現したことは非常に興味深い。

 ボディを横から見ると、最初に目に留まるのはボンネットが高級セダンにしては“異様”に短いところだ。

メルセデスの新型EV「EQS」メルセデスの新型EV「EQS」。空気抵抗係数0.20を達成している(広報写真)

 Aピラーを最大限前方に押しやり、広いキャビンスペースを実現している。エンジンもトランスミッションも必要のない、EVだからこそ実現できた特徴的な形状だ。

 エンジンの大きさこそが高級車の証であり、ひと目で「デカいエンジンを積んでいる」と分かるロングノーズからの決別。この短いフロント部分に、メルセデスのEVに対する並々ならぬ決意が伝わってくる。