ボンネットを開けられない?

 ではこの短いボンネットフードの下には何がどのように収まっているのか。

 今回試乗したモデルは後輪駆動車で、クルマを動かすモーターが後輪部分にのみ配されている。ボンネットの下にモーターがないことは承知している。フロント部分がどれだけカラッポであるかを確かめたい。

メルセデスのEVAアーキテクチャメルセデスのEVAアーキテクチャ。この図は四輪駆動モデルなのでフロント部分にもモーターが配されているが、今回試乗したEQS450+は後輪駆動。モーターはリアにのみ配されている(広報写真)

 と、フードオープナーを探したのだが、どこにも見当たらない。運転席の足元、助手席の足元、シートの下、グローブボックスの中。ガサゴソと家探しをしたのに見つからない。さらには大きなタッチパネルの画面を掘り下げて行っても出てこない。観念してメルセデスに泣きを入れると、「ボンネットは開きません」と驚愕(きょうがく)の事実を知らされた。「いや、一体構造ではなくフード部分に切れ目があるし、開くはずですよね」と食い下がると、「メンテナンス等、必要なときにのみ整備工場で開けることができるのです。お客様が開けることはできません。開ける必要がないからです」とこれまた驚愕の解答。自分のクルマのボンネットを、自分の意思で開けられないと言うのだ。

「ちなみにですね」担当者は続けた。「ウィンドウウォッシャー液の補充は、車体側面に専用の口が設置されています。スタンドなどで補充される際は、そこから入れていただきます」と。ユーザーには決して前を開けさせない徹底した姿勢。余計なことはしてくれるな、ということか。それがEQSである。でもまぁICEのSクラスにしても、ご自身で前を開けるユーザーは少数派でしょうからね。