岸田首相が自民党総裁選への不出馬を表明し、次期総裁の座を目指す動きが活発になっている。その中で最有力候補の1人と目される石破茂氏。自民党を揺るがす裏金問題や派閥の行方、総裁選のあり方を語った。(構成/石井謙一郎)
「選挙の顔」より大事なこと
――党三役や閣僚を歴任された石破茂さんのお立場から、渡辺恒雄さんの著書『自民党と派閥 政治の密室 増補版』を読んで、どんな感想をお持ちになりましたか。
「ああ、こんな時代があったなあ」というのが読後感です。この本が書かれた昭和40年代は、自民党の安定政権が連綿と続いていました。「金、ポスト、選挙応援という派閥の3要素が遺憾なく発揮された、ある意味幸せな時代だったんだ」ってことです。
特に若い議員たちには、この本を読んで、当時と現在では時代環境が全く異なることを知ってほしいと思います。
――渡辺さんは派閥の存在理由として、ポスト配分、活動資金、選挙支援、総裁選の4つを挙げています。
特に大きかったのはポストでしょう。自分を支持してくれた派閥の子分を、どれだけ重要ポストにつけられるか。この本によれば、そのために金がやたらと飛び交うことを「黄白乱れ飛ぶ」と言ったそうですね。金で人を篭絡し、人を釣るためにひとつのポストに対して手形が5枚も10枚も出されていました。
実際に「ニッカ、サントリー、オールドパー」という有名な言葉がありました。ニッカは2000万円で、サントリーは3000万円。オールドパーというのは5000万円です。
金を配ることが全くなくなったとは言わんけど、今はもう、かつてのようにばら撒きはしないでしょうな。ナベツネさんが書いたような派閥によるドロドロの権力争いは、小泉政権以降なくなったんじゃないかな。
――昨年明るみに出た自民党のパーティー券を巡る裏金問題に端を発して、政治資金規正法が改正されました。