シーツをたたもうとする夫を
「なんか違う」と止めた妻

「(前略)ようやく一つのシーツを選び、注文しました。すると翌日、さっそくシーツが届きました。中国はネットショッピングが発達しているので、大抵のものは(住所や買ったものの出荷場所にもよりますが)1日か2日もすれば手元に届きます。現代文明さまさまです。シーツ選びに迷った時間もこれでチャラです。

届いたシーツを開封し、とりあえずソファの上に広げてみます。うんうん、まあ悪くないんじゃないか。これでようやくソファが使えるようになるぞ。じゃあ、さっさと洗濯機に入れて洗うとするか……とそそくさとシーツをたたもうとする僕の手を、嫁がやおら静止してきました。そして『なんか違う』と言い始めてしまったのです。

そしてたたんだシーツを洗濯機に入れるのではなく、それが送られてきたときの箱に戻して、『返品しましょう』と嫁は言い始めました。スマホで手早く返品の手続きを始める嫁。(中略)ほどなくして集荷のおっちゃんが来て、届いたばかりのシーツを持っていきます。そして嫁はまたアプリと睨めっこを続け、また1日ほど悩んだ挙句、新しいものを注文しました。

――というやりとりを、すでに2回繰り返しています。要はその次に来たシーツも嫁は気に入らず、さっさと返品してしまったのです。」

(『返品が簡単すぎるのも考えものだな、と思った話』より)

 こうした取引が当たり前になっている背景には、中国の法律がある。中国には「消費者権益保護法」なるものが存在し、購入後7日以内であれば理由なく返品や交換ができる。この法律は本来、消費者の権利と利益を保護し、電子商取引業界の健全な発展を促進することを目的としていた。

 というのも、もともと中国では詐欺師や怪しい業者も多く、赤の他人とは「騙し騙される」関係性が当たり前だった。加えて道路状況も悪く、物流網も未発達だったため、企業・一般消費者の双方にとって、国産ECサービスは気軽に手を出せるものではなかった。米国発のECプラットフォーム「eBay」のほうが人気だった時代もある。