30万円のサングラスを爆買いし
“転売できない”と返品する人も
こうした環境下でECの寵児・阿里巴巴(Alibaba)が急成長し、淘宝(Taobao)や天猫(Tmall)が普及した要因は、上記のとおり国が保障を手厚くし、騙された消費者の泣き寝入りを抑止したためだ。
そして時代は変わり、ネット上の取引で知り合った赤の他人を無条件に信頼する人も増えてきた。売り物がどんな状態か分からず、一昔前には到底購入できるものではなかった「中古商品」の取引も、若者主導で盛り上がるようになった。
その弊害として、ネットネイティブの若者が外の世界に出た途端に、昔ながらの詐欺師に騙される事例もわらわら出てきているようだ。そんな呆れた話もありつつも、新型コロナウイルス禍を経て、非対面・非接触で人気商品が買えるライブコマースが台頭。「返品可能」の仕組みも相まって、さらに普及が進んでいった。
ただ、返品が当たり前になれば悪用する人も増えるもので、その後は転売するために「まとめ買い」をして、売れなければ返品する猛者が出現するようになった。
ある16年経営しているサングラス販売店は基本的に返品率が低く、年間を通じて15%前後だという。だが「中古ECサイトの閑魚(Xianyu)で売りたい」と言う理由で30万円近い商品を次々と注文する客が現れ、要望通りに販売したところ、「やっぱり閑魚で売りにくい」という理由で返品されたという。
他のショップでも、半年のうちに77台もスマートフォンを購入し、全て返品した人がいる。こうした迷惑ユーザーの中には、Alibabaの設定する「返品送料保険」を悪用し、返品時に「送料」を補償してもらうことで、少額ながら金銭を得ている人もいるそうだ。
返品率が高まり、商品のやり取りが増えることで儲かるのは迷惑客だけではない。配送業者や宅配ロッカーの事業者も収益を上げている。