こうした大規模農家は、交付金がなくなれば一気に経営が悪化します。倒産する農家もどっさり出るでしょう。交付金の原資は税金ですが、日本の債務残高の対GDP比は世界一、それも突出して高いことはよく知られている事実です。

 債務残高の対GDP比が日本よりずっと低い国でもよく財政破綻するのに、日本が破綻しないのはなぜなのか首をかしげたくなりますが、それだけ日本経済に対する信頼が外国にはあるのでしょう。

 とはいえ、いつまでもこの調子で、たとえば100年続くとは到底考えられません。言い換えれば、財政が厳しくなり交付金が大幅に減額されたり、経済破綻によって交付金がなくなる事態になれば、大規模農家が大量に退場することになるため、農産物価格は一気に上昇し、農地の荒廃もこれまでとは比較にならない規模で進むことになります。すでに大規模農家ですら高齢化によって疲弊し、退場しつつあるのです。

 日本の周囲が海上封鎖されず、石油も食料も入ってきていても、重大な食料安全保障上の危機が訪れます。そんなことになるより前に、最初から大規模農家やこれから大規模になる農家が、交付金を失っても維持できるように政策誘導すべきです。そのためにも農産物の価格は上げないといけないのです。