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みずほフィナンシャルグループが、弱点とされてきた国内部門のリテール強化の秘策を繰り出した。
傘下のみずほ銀行の支店長に重点顧客1万2000先、つまり1支店当たり30先前後をリストアップさせ、融資はもちろん、事業承継や後継者選び、オーナー個人の資産運用などのよき相談相手となって取引の深掘りを図ろうとしているのである。
実はみずほは、海外では地域ユニットごとに約30の非日系企業グループを選定し、トップ外交を行う「スーパー30」と名付けた戦略を実施しており、一定の成果を挙げている。それと同様の重点顧客に狙いを定めた戦略を、昨年5月からはリテールでも採っているというわけだ。
選定基準は、これまでの取引量や採算性、さらには今後の取引展望など複数項目からなり、決して一律ではない。ただ支店長は、信頼関係を築くためにまずはオーナーと一対一で会い、着実に距離を縮めていくことを求められている。「支店長が本部の人間と一緒にいきなり訪ねていって不躾(ぶしつけ)な質問をするなど、失敗があった」(みずほ幹部)ことが反省にある。
こうしてオーナーの懐に食い込めば、中小企業取引の採算性向上も見込めるという。単なる金利競争ではなく、企業のニーズを把握することで、地方銀行にはできないメガバンクならではの付加価値を提供することができるとみているのだ。もちろん、オーナーの個人取引や企業の従業員取引などへ拡大できれば、取り扱う絶対額も増えるはずである。
実際、具体的な重点顧客が定まったことで、支店長の士気も上がっているという。例えばこの春に開催された支店長向けの信託研修は、土日にもかかわらず200人以上が参加した。
今年7月1日に傘下銀行の合併を予定しているみずほは、本当に復活できるのか。リテール強化はその試金石になりそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)