国内の金利上昇で中小企業への貸出金利が上がり、地方銀行の本業である預貸ビジネスが復活する――。多くの地銀業界関係者は今、そんな淡い期待に胸を膨らませている。だがそれとは裏腹に、大阪では熾烈な金利の“たたき合い”が勃発。特集『金利で明暗!銀行絶望格差』(全16回)の#2では、戦いを仕掛ける島根の“殿様地銀”の存在に迫った。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
地銀業界に広がる期待と楽観論
本業復活は本当に訪れるのか?
1999年3月に日本銀行がゼロ金利政策を導入してから約25年、地方銀行は超低金利時代をひたすら耐えてきた。
地銀の二大事業は預貸金ビジネスと有価証券運用だ。預貸金ビジネスとは、個人や企業から低い金利で預金を集め、それよりも高い金利で企業に貸し出し、その金利差でもうけるビジネス。銀行の本業だ。
だが超低金利の中で、預貸金ビジネスの収益性は下がるばかり。日本国債や地方債で行ってきた有価証券運用も、金利が低下すれば得られる利息も少なくなる。
そこで、地銀が取り組んできたのが、投資信託や生命保険などの金融商品の販売や、取引先企業へのコンサルティングの提供などの非金融事業だった。
だが、餅は餅屋。金融商品の販売はともかく、落ち込む本業をコンサルティングや地域商社事業でカバーできた話は、ついぞ聞かれなかった。追い込まれた地銀の中には、ライバルとして長年競い合ってきた他県の地銀と手を組むケースも出始めていた。
そこへ訪れたのが、日銀によるYCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)の柔軟化である。賃金と物価の好循環が見え始め、いよいよ金融政策の変更が間近に迫ってきたのだ。
金融政策が変更されて超低金利時代から脱却できれば、企業への貸出金利もそれに合わせて上がり、本業が復活する――。既に地銀関係者の間からは、企業への貸出金の金利引き上げ交渉に向けて、行員に研修を行うといった気の早い話も聞かれ始めた。
地銀関係者を前のめりにさせる数字も出ている。2023年3月期の主要地銀の貸出金利息と有価証券利息配当金、資金調達費用などを合算した資金利益は、7年ぶりに3兆円台を回復したのだ。
だが、本当に本業が復活し、ばら色の世界が戻ってくるのだろうか。中小企業の資金調達の現場や、それに対応する地銀の対応をつぶさに見ていくと、決して金利が上昇し、本業が復活するとは思えない。
とりわけ大阪では、島根の“殿様地銀”が絡み、その傾向が強く表れていることが分かってきた。次ページで大阪の厳しい現状をレポートする。