当事者がお亡くなりになっている今、これらはすべて筆者の勝手な想像でしかない。ただ、こういう「新旧政治勢力の権力闘争」というのは、国でも自治体でも非常にありふれた話でもある。
一般の方はあまりご存じないだろうが、メディアが報道をする国会議員や自治体首長の「不正」や「スキャンダル」の大半は、「公務員のリーク」である。
筆者も記者をやっていたとき、中央省庁・県庁の幹部職員からさまざまな「怪文書」をもらった。大臣や副大臣、あるいは知事を引きずり下ろすための「紙爆弾」だ。
「国民のためにはあいつは潰さないといけない」「県民を裏切ることをしているので許せない」と義憤にかられたマジメな公務員たちの告発を、経験の浅い記者は素直に聞き入れて記事にする。しかしベテランになってくると、これが「政敵を潰すためにネタを食わされているんだな」と気づくものなのだ。
関係が深くなると、「○○市長を潰すためにこんなネタがあるんだけど、おたくの新聞に(スクープとして)抜かせてあげるよ」とストレートに持ちかけてくる「フィクサー」のような公務員もいる。実際、旧知の某自治体の幹部職員などは、実際にそのような「内部告発」をメディアにリークして、首長を辞任に追い込んで、自分の思い通りの行政改革を進める候補者を新たに擁立することに成功をした。その「武勇伝」を筆者に語っていた時、この幹部職員は「こっちがやりたいことをやるには、あいつは邪魔だった」と笑っていた。
裏社会がからむ港湾利権というものがあるのならそれはそれで恐ろしい。公務員の天下り利権だって何年たっても壊滅できないのでこちらもまた闇は深そうだ。
ただ、メディアの仕事をしていて本当に恐ろしいと感じたのは、これまで権力を握っていた者たちが失脚したときに生まれる、憎い政敵を地獄に突き落としたいという「怨念」である。今回がそうではないことを祈りたい。
(ノンフィクションライター 窪田順生)