「僕らOEMは、必死になって、大変なコストをかけてクルマを開発している。クルマはどんどん進化する。進化する分コストは上がる。それが丸々おたくらに行ってしまう印象だ」

 OEMというのは自動車メーカーを指しています。自動車メーカーの人は、自分たちのことをこう呼びます。一般的に認識されているOEM(製品受託製造会社)とはいささかニュアンスが異なります。

 ともあれ、偉い方は「半導体の連中は俺らの努力を横取りして、うまいこと儲けやがって」と言わんばかりの口ぶりです。

半導体メーカーは「ボロ儲け」している?

 確かに車載半導体の市場は大きく延びています。

 では半導体メーカーが(業界内では「デバイスメーカー」と呼ばれます)大儲けしているのかと言うと、実はそうでもありません。理由は二つあります。

 一つは「自動車メーカーの買値が安い」こと。コロナ期間中は絶望的な品不足になり、多少は値戻しが進みましたが、それでも「大儲け」というには程遠い。日本のデバイスメーカーの利益率を見ればそれは明らかです。

 もう一つは、「自動車メーカーは最先端の製品をほとんど使わない」ということです。

 ちまたでは、やれ5ナノだ7ナノだと線幅の細さを競う声が聞こえてきますが(回路の線幅が細くなればなるほど、消費電力が少なくなり、計算速度が速くなり、チップの面積も小さくなる、と良いことずくめなのです)、自動車に搭載されている半導体は良いところ40ナノ程度。最先端の製品ではなく、一昔も二昔の前の、言わば“枯れた製品”です。枯れた製品は安定した利益を出せますが、決して大きく儲かることはありません。