自動車メーカーが最先端の半導体を使わない理由

 なぜ自動車メーカーは最先端の製品を使わないのか。それにはいくつかの理由があります。

 一番に来るのは信頼性と耐久性。クルマは高温、低温、振動、湿気、ほこりなど、極めて劣悪な環境で使われることが前提です。搭載されるデバイスは、それに10年も20年も耐えなければなりません。2~3年で壊れても、笑って済まされるスマホとは大違い。窓が開かなくなっただけでも大騒ぎです。

 スマホが壊れることは容認する人も、クルマが壊れるのは絶対に許してくれない。特に安価なクルマのユーザーにこの傾向が強い(ランボやフェラーリが壊れて文句を言う人はあまりいません)。

 だから車載半導体は、採用されるのに厳格な認証プロセスを設けています。これをパスするには売り手にも買い手にも相当な手間と時間がかかる。勢い、実績があり、信頼性の高いコンベンショナルな製品を使う、ということになります。

ハイエースはいいクルマだよね

 偉い方は銀の容器の中にあるカレーのルーを、添えられたスプーンを用いず、いまいましげにドバドバと直接白飯にかけました。それを間髪入れず、わしわしと勢いよく食べ始めます。

「あちちちち……熱い。ちくしょう」

 そりゃそうでしょう。供されたばかりのカレーをイッキ食いしたら、熱いに決まっています。額の汗を拭いながら、偉い方は私に尋ねます。

「ところでヤマグチくんは、何に乗っているの?」
「ハイエースです。ディーゼル4駆の寒冷地仕様です」

写真:自前のハイエース自前のハイエース。いろいろいじった結果、カタチはだいぶ変わっちゃっていますが…… Photo by Ferdinand Yamaguchi

 そう答えると、「うん。あれはいい。いいクルマに乗っているね」と少し機嫌が良くなりました。ハイエースに乗っていることを悪く言う人は、日本に一人もいないでしょう。乗っててよかったハイエース。