東京都立大学の授業料無償化拡大、大阪公立大学と兵庫県立大学の完全無償化は、他の大学にどのような影響を及ぼすのか。受験生を奪われる大学はどこか。受験生を奪える大学はどこか。特集『大学格差』(全20回)の#19では、大学授業料無償化の影響を追う。(ルートマップマガジン社取締役・編集長 西田浩史)
大阪公立大が無償化で難化すると
神戸大ギリギリ合格層が流れ込む
東京都立大学は無償化を拡大して2024年度から、大阪公立大学と兵庫県立大学は26年度から世帯年収の制限なしに授業料が完全無償化される。これら3大学は無償化対象となる地元在住者から受験先としての人気が高まり、難化する可能性が高い。
では、三つの公立大学が授業料無償化によって難化した場合、他の大学にどんな影響が出るのか。受験生はどこへ流れるのか。
他大への影響が最も大きいのは大阪公立大だろう。公立大の中で最も規模が大きく、医学部を含め学部が幅広くそろっているからだ。
大阪公立大が難化すると最も割を食うであろう大学は、同大がライバル視している神戸大学である。両大学共に「旧三商大(三大商科大学)」でくくられる歴史をくむ伝統校。京都大学、大阪大学に続く関西の国立大学3番手である神戸大の方が、人気も受験難度も上をいく。
この神戸大にギリギリ合格できそうなラインにいる受験者層が、難化した大阪公立大へ流れることが予想される。合格できそうな難度、授業料無償の魅力、加えて大阪市内の一等地にキャンパスが新設されるという立地の利便性で引っ張られていくのだ。
受験生を奪いながら、人気でも受験難度でも近づいてくる大阪公立大は、神戸大にとって一層厄介な存在になる。この他に九州大学や北海道大学、広島大学、岡山大学あたりの国立大から大阪公立大へ流れてくると予想される。
無償化による難化で大阪公立大へ流入する受験生がいる一方、難化によって離れる層も出てくる。流れる先は、国公立大であれば京都工芸繊維大学や奈良女子大学、滋賀大学、和歌山大学などだろう。ただ、どれも小規模大学で、とりわけ文系学部・学科の種類が中途半端。選択肢が限られるため、大規模な総合大学で学部の種類が満遍なくそろう関西の難関私立大学がより太い流出先になると考えられる。これらの大学は、共通テスト併用方式など、国公立大本命の受験生が併願しやすい入試制度も充実している。
では、最も受験生が流れるだろう私立大はどこなのか。
次ページでは、大阪公立大、兵庫県立大、そして東京都立大それぞれが難化した場合、受験生が流れる先を追う。